勉強と人生に役立つものの考え方『本当の「頭のよさ」ってなんだろう?』齋藤孝


クイズ番組を見ていた母が、難解な問題に答える男を見て、何気なく「頭がいい」と言ったのを聞いて、ふと思った。「頭がいい」って、そもそもどういうことだろう。

 

学生の頃は、わかりやすい物差しがあった。成績である。成績が高ければ、その人は頭がいい。そういうことになっていた。

 

中学時代からの友人にひとり、全国模試でも上位に食い込んでいるほどの才女がいたことを思い出す。当時の私にとっては、彼女こそが「頭がいい」という言葉の象徴であった。

 

だが、社会にひとたび出てみれば、様相はまったく変わってくる。社会には成績という水準は存在しない。いや、そもそも、わかりやすい基準自体がないのだ。

 

では、学生の頃に高い成績を誇っていた「頭のいい」学生が、社会に出ても活躍できるかといえば、そうと決まっているわけではない。もちろん、社会に出ても如才なく振舞う人もいるが、学生時代に成績が悪くても要領のいい人の方が頭角を現わすようになる。

 

考えてみれば、学校のテストというものの多くは、単純な反復と暗記である。それによって好成績を収めるということは、単に暗記力や記憶力が高いというだけのことで、それだけが「頭のよさ」を指すわけじゃない。

 

テレビのクイズ番組などの常識問題、雑学もこれと同じだろう。つまり、こうして考えてみると、やはり学校の成績がよいことを「頭がいい」と称するのは間違いであるように思う。

 

だが、そうなってくると再び疑問は最初に戻ってくる。「頭がいい」とは、すなわち、いったいどういうことなのだろうか。

 

その答えを見つけるべく図書館から借りてきたのは、齋藤孝先生の『本当の「頭のよさ」ってなんだろう?』である。

 

齋藤孝先生といえば、多岐にわたるジャンルの本を数多く凄まじい頻度で出版している方だ。いわゆる、「頭のいい」人、というわけで。彼ならば、私のこの疑問にもひとつのヒントを出してくれるのではないかと考えたのだ。

 

果たして、その本にはこう書かれていた。『「頭がいい」というのは脳の「状態」だ』と。頭の働きがいい状態がよく保たれている状態こそが、「頭がいい」ということなのだ、と。

 

なるほど、と思った。頭のパフォーマンスは、学生の頃であろうが社会人になってからであろうが働くものである。つまり、齋藤先生は「頭がいい」を能力の優劣ではなく、ただの状態として捉えているのだ。

 

そこには知識の有無や要領の良さのようなものはない。誰であっても脳のいい状態と脳の悪い状態がある。脳がいい状態を「頭がいい」とするのなら、どんな人であっても「頭がいい」人になれる。

 

それは、今までの私の中での「頭がいい」という考え方を根底から覆すようなものだった。学生の言う「頭がいい」とも、社会人の「頭がいい」とも違う。

 

「頭のよさ」は「現実を変える力」なのだという。私たちの人生に、理不尽な現実はさも当然のように眼前に寝そべっていて、私たちは生きていくためにもそんな現実をどうにか乗り越えていかないといけない。

 

学生の頃、私はテストのための勉強をしながら、いつも疑問に思っていた。「いったい何のために私は勉強をしているんだ。この勉強が何の役に立つんだ」と。

 

だが、そうじゃないのだ。「何かのために勉強をする」というのではない。勉強は生きるための武器の研鑽である。学んで知識を得ることで、より生きやすくなるのだ。

 

その本では、他にも学校に行く理由や本を読むことの意義、受験への挑む心構えなどを、親や先生の言う理屈とはまったく異なる視点から書かれている。

 

頭がよくなると世界が広がる。自分は自分で思っているよりも遥かに自由なのだと知ることができる。それこそが、「頭のいい」人間への一歩なのだ。

 

 

頭のよさとは?

 

よく「あの人は頭がいい」とか「自分は頭がよくないから」とか言いますよね。それって、根拠はなんだろう?

 

ぼくは、「頭がいい」というのは脳の「状態」だ、と考えています。みんな、頭のはたらきのいい状態と、そうでない状態がある。その「はたらきのいい状態」を増やしていけば、だれもがどんどん頭がよくなる、という考え方です。

 

頭の良し悪しを、他の人と比較するのは意味のないことです。だって、どんなに羨んだところで、他の人の頭脳と自分の頭脳を取り換えるわけにはいかないのです。だから、人を羨む暇があったら、自分の「頭のいい状態」を少しでも増やしましょう。

 

頭の良さは、人間に幸せをもたらしてくれるものです。人間が、強く生き抜いていくために獲得した能力、それが頭の良さ。頭を良くすることは、生きていくための幸せに強く結びついているのです。

 

頭がいい状態を増やしていくことで、きみたちは、目の前の状況を切り拓いていく力、現実を変えていく力をもてるようになります。頭の良さは生きていく力なんです。そのためにはどうしたらいいか、考え方の根本をこれからお教えします。

 

中学生、高校生の今から一生使えるものの考え方を身につけて、頭のよさを磨いていけば、きみたちは「無敵」です。さあ、頭の良い状態を増やし、現実を変える力を手に入れる旅に出発しましょう。

 

 

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