それは夕食を食べる時に、ふと頭の中に浮かんだ疑問がきっかけだった。あそこから、私の食生活は変わったのだ。
かつて、私は肉が大好きだった。今の私しか知らない人は、想像すらできないと言う。
豚肉も鶏肉も大好きだったが、やはり一番は牛肉だ。分厚い肉をステーキにして食べるのが堪らなかった。
しかし、ふと思ったのだ。それは唐突に浮かんできた疑問だった。
肉を食べる人は体臭が濃くなるという。ということは、肉を食べないでいると体臭はなくなるのではないだろうか。
肉を食べ過ぎることについて健康に良くないという話はよく耳にする。しかし、野菜だけを食べることのデメリットは思いつかない。
ならば、野菜だけを食べる食生活は健康にとてもいいのではないだろうか。挑戦はそんなところから始まったのだ。私はベジタリアンになろうと決意した。
しかし、元々モチベーションが高いわけではない。私は何度も挫折して、そしてまた何度も目指した。
長年の食生活は変えられない。まして、私は肉が大好きなのだ。肉をまったく食べない生活にするのは苦痛だった。
そんな中、私は一冊の本と出会った。それは、ジョン・ティルストン先生の『わたしが肉食をやめた理由』という。
それはタイトルの通りの本だ。先生の妻がある時、ベジタリアンになると宣言した。先生は、それを機に自分もベジタリアンになる。
しかし、ベジタリアンになるのに予想外の問題があった。世間的に、ベジタリアンは冷たい目を受けていたのである。
招待されたパーティーで、ベジタリアンになった理由を聞かれたことが、先生がこの本を書くきっかけになった。
社会的視点、環境的視点、経済的視点、健康的視点。一方向ではなく、さまざまな視点から肉を食べるということの影響と、肉をやめる場合の影響を綿密に調査している。
読んでいて、私が感心したのは、こういった本にありがちな、ベジタリアン指向を過剰に持ち上げるような姿勢がなかったことだ。
肉を食べないことによるデメリットも、偽りなく綴っている。それが、むしろこの本の信憑性を高くしたのだ。
私の仮説、肉をやめて野菜だけの生活にすると健康になるのでは、という仮説の答えも、その中に書かれていた。
それによると、もっとも健康的な食事は、たくさんの野菜と少しばかりの肉、であるらしい。つまり、完全に野菜食だけ、というのも、身体によくないのだ。
読んだ後、悩んだ。これからどうするのか、をだ。そして、悩みぬいた末に私はひとつの結論を下した。
「うん、うまい」
私は鳥の手羽先を口に運ぶ。そう、私は結局、ベジタリアンになることを断念したのだ。
ベジタリアンになることをやめた私を、意志が弱いと揶揄する者もいる。しかし、先生が自らの意思でベジタリアンになったように、私もまた、自分の意思で野菜食をやめたのだ。
大した違いはないじゃないか、と人は言う。しかし、そこにある違いは決して小さくはない。
肉を食べることで生じる環境問題。経済の動き。そして、私の身体で間違いなく起きている健康上の変化。
それを理解せずに食べることと、理解したうえでその道を選ぶのには、大きな差があると思うのだ。
今や食事法に限界はない。毎日のように、多くの定説が唱えられ、食事法が紹介されては消えていく。それらをすべて試していてはきりがない。
大切なのは、その中でどのような食べ方を信じ、自分の食べ方として確立するか、である。
食事を減らしたり制限したりするのではない。我慢ではなく、食事から得られる幸福を追求すれば、おのずと答えが見えてくるはずなのだ。
ベジタリアンになったきっかけ
10年前、妻がベジタリアンになると宣言した。家族に強制はしないというが、わたしたちにいくらか影響が及ぶのは避けられない。
わたしたちはあまりこの問題を考えたことがなかった。バーべキューの時には大量の肉を食べながら、肉を焼くコツを長々と話し合うのが男同士の付き合いになっている。
妻のシーラが食べ物について疑問を感じるようになったのは、ジャレドの態度がきっかけだったと思う。当時10歳だった末っ子のジャレドは、それよりずっと以前から料理の原材料について知りたがった。
考えてみればジャレドは純真で、料理の常識などに毒されていない。もしかすると、彼は人間の自然な嗜好を示していたのかもしれない。
10年経って、今の私は断固としたベジタリアンだ。何かを失ったとか、つらい選択を迫られたとは思っていない。
わたしたちがこれまで辿ってきた旅路の中で、何にもまして驚いたことがひとつある。菜食主義に対してたくさんの人が示す反感の強さだ。
これほど感情的な問題だとは知らなかった。しかし、その表面からそれほど遠くないところに、肉を食べないと精力がつかないという思い込みが潜んでいる。男らしい男は肉を食べるものなのだ、と。
数年前、シーラとわたしはロンドン郊外の緑豊かなウィンブルドンでディナーパーティーに招かれた。
自然にわたしたちの菜食主義が話題に上った。なぜベジタリアンなのかとご亭主に詰め寄られたときには、もごもごと自分の健康を盾にとってお茶を濁した。
後になって、シーラからこの時の態度を怒っていると知らされた。自分から進んでベジタリアンでありたいと思うのなら、しっかり反論できるよう基礎を固めるべきだというのだ。
わたしはジレンマに陥った。たしかに、自分の意思でベジタリアンになった。しかし、その根拠に確信がなかったので、自分の立場を説明できなかったのだ。もっと知識が必要だった。
というわけで、この本は菜食主義を支持する議論が成り立つかどうかについてのわたし自身の調査報告であり、いくつかの観点から検討した記録である。
これは机上の空論ではない。今度ディナーパーティーに招待されたとき、ベジタリアン用の料理を用意してもらえたら、これを使って話をするつもりだ。
だんだんと調査が深まるにつれて、メディアの報じるくだらない問題やただの脅しの向こうにあるものがよく見えるようになってくる。
すると、もっと明るい話題が、とりわけ健康に関して増えていった。読者もわたしといっしょにこの旅路を辿るようお誘いしたい。
そして今、わたしは自分がベジタリアンであることを堂々と語ることができるし、そこにいろいろな事実や研究成果をいくつもちりばめることができるのだ。
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