最初、そのタイトルを見た時、私の胸には一抹の反感が芽生えた。その反感が、むしろ私にその本を読ませたのだ。
とはいえ、それはどうやら私がタイトルから想像していたような、性差別やセクシュアリティ的な問題を取り扱っているわけではないらしい。
どうやら、経済や社会における革新に対する前向きな思考を総称して、「男性的」だと称しているに過ぎないようだ。
つまり、この本は、日本という大きな枠組みで捉え、私たちの時代を見る目や、今後の我が国の行く末を考えていく、というものであるらしい。
「日本はますます男性化していく」と、この本では説かれている。裏を見てみると、この本の出版年は2005年。今から15年ほど昔のもの。
この予言は、当たっていただろうか。私は暫し、改めて考えてみることにする。せっかくだしね。
男性的な社会か、と問われると、正直なところ、とてもそうは思えない。というよりも、そもそも「男性的」「女性的」というもの自体が今はわからなくなっている。
男はますます女々しいし、女はますます逞しい。かつての性別が逆転しているようになっているのは、昔の人は想像にもできなかっただろう。
にもかかわらず、相変わらず社会は男が引っ張っている。総理大臣はずっと男性だ。しかも、最近の総理大臣は誰も彼もどこか頼りない印象を受けてしまう。
そう考えるとやっぱり、日本は今もまだ、この本のいうところの「女々しい」時代から抜け出せていないように感じる。
現代は混迷を極めている。感染症が蔓延して、どこもかしこも陰鬱な空気が立ち込めている。
感染症が流行する一年前は、世の中がこんなふうになるなんて誰が想像できただろう。ビジネス書や社会、経済を解説する本は、軒並み過去のものになってしまった。
メディアが言っていることは、どうにも首を傾げてしまう。それも仕方のないことなのだろうけれど。
経済を回復させようとすれば感染が広がる。感染を抑えようとすると、経済が傾く。私としては、健康を崩せば経済も何も本末転倒じゃないかなと思うが。
ともあれ、そんな時代だ。治療法が開発されるまでは気が抜けない。気軽に人と会うことすらもできないような社会になってしまった。
社会に蔓延している暗い霧。それは感染症のことだけじゃない。未来への展望がないから、その不安が陰となって灯りを喰っているのだ。
そんな今だからこそ、私たちには男性的な姿勢が必要なんじゃないだろうか。
今までと常識が変わったのなら、いつまでもその常識にしがみついていては先に進めない。新しい常識に合わせた生き方を、模索するべきでは。
変わらざるを得ない状況になったのに、未だ多くの人たちが変化を嫌っている。それまでの安定した生活にこだわっているから、社会は変わらない。変わらないまま、どんどん辛くなる。
誰か、引っ張るような人が、今だからこそ必要なんだと思う。三歩下がってついていく奥ゆかしい大和撫子とは違う、自分から堂々と前を歩いていくような人が。
いっそ、今までのものをみんなみんなぶち壊して、新しく作り直せばいいんじゃないか、とすら、思うのだ。
『男性的日本へ』にも書かれているけれど、日本は底力のある国だ。誰かの後を必死になってついていかなくたって、一人でも十分に生きていける。
かつては奥ゆかしかった女が今や、男の首根っこを掴んでいるように、日本もかっこよく、強く、生まれ変わらなければならない時代になった。
『男性的日本へ』に書かれた予言。これからますます男性化していくっていう、予言。当たったか、外れたかじゃない。その予言を実現させるのが、大切なんじゃないかと思う。
女々しくて
「男性的」は長い間、死語に等しい扱いを受けていた。男はすべからく「紳士的」でなければならないという時代が長く続いたからだが、それに加えて「男性的」も必要だと、この数年間に風向きが変わった。
どうしてこんなに変わったのか、と考えたくなるが、今はそんなことより前向きに「次は何をすべきか」を考える方が時代の思考になってきた。
すでに男性化時代は始まっているのである。日本を巡る外交・経済・産業の変化はあまりにも急なので、その具体策の数々を総称すると「男性的」が古い表現ながらピッタリなのである。
社会的に期待される能力や役割には今も性差があって”自ら事に当たる””責任をもって保護する””外部に立ち向かう”などの精神は、より多く男性に期待されている。
日本は男性化したし、これからますます男性的になるだろうと私は思っている。それは世界の常識からすれば、ごく当然のことで、それを不思議に思う国はない。
今は”頼られる日本・頼りない日本”だが、これからは”頼らせる日本・頼りある日本”へ変わっていくと信じている。
一巡後の日本国民は、日本を根本から再考するようになると思うが、本書がそのときのヒントのひとつにでもなれば幸せである。
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