誰からも「わかりやすい」と言われるために『伝え方の教科書』木暮太一


オオカミは遠吠えで獲物がいたことを知らせる。イルカは超音波で会話しているらしい。チンパンジーは毛づくろいで愛情を伝える。どうして人間は、言葉なんて複雑なものを使わなければならないのだろう。

 

まるで宇宙人みたいだと言われた。自分の言葉のリズムが、どこか周りのみんなとズレているのだと、幼い頃からゆっくりと思い知らされてきた。

 

伝えたいことが伝わらない。同じ日本語のはずなのに、私の言葉と、彼らの言葉はまるで違っているらしかった。どうしてこんなことになるのだろうと、思ってもわからなかった。

 

やがて、私と言葉を交わしてくれる人はだんだんと少なくなっていった。それでもどうしても言葉を交わさなきゃいけない時は、通訳のような人がいた。笑いながらも、内心で、哀しくなった。

 

いっそのこと、宇宙人になりたいと思った。言葉が通じない、宇宙人に。地球人だから哀しくなるんだ。きっと、私の電波は、他の人たちとは違うのだ。52ヘルツのクジラみたいに。

 

もう何もかも嫌になって、捨て鉢になって、どうでもいいやと、全部投げ出してしまいそうになった時、一冊の本が目の前に差し出された。

 

彼女はよく通訳をしてくれている子だった。私の伝えたいことを理解してくれる、数少ない人。彼女は、私が理解されなくて苦しんでいるのを、哀しい目で、いつも見ていた。

 

その本は、『伝え方の教科書』と書いてあった。これを読めば、私でも、誰かと会話ができるかもしれない。ただ一方的に言葉を投げかけるだけじゃなくて、互いに意味を伝え合う、会話を。

 

「わかってくれない相手を責めても仕方がない。伝わらないのは相手のせいではなく、伝わるように話していない自分のせいだ」

 

その言葉が、私の心に突き刺さる。そうだ、私はどこかで、理解してもらえないことに不満を抱いていた。そして、自分は間違っていなくて、受け取れない周りがおかしいのだと思い込んでいた。だからこそ、宇宙人になろうとしたのだ。

 

でも、そうじゃない。伝わらないのは私が悪いのだと。その本は言った。そして、こうも。やり方さえ学べば、誰でも相手に伝わるコミュニケーションをできるようになる、と。

 

誰に、何を伝えるのか。相手に伝わる日本語を使うこと。正しい順序に話を組み立てて、ちゃんと伝わる言葉に言い換えること。

 

自分の言葉を、思い返してみる。私の言葉はまるで歪に組み上がったパズルのよう。ピースばかり増やして、そんなんじゃ、相手に伝わりやすいわけがない。

 

この本を読んでいると、ようやく私は、自分の言葉の問題が見えてきた。それなら後は、直すだけ。そうか、これが鉄則か。なんとなく、わかってきたような気がする。

 

私には夢があった。ちゃんと言葉を伝えられるようになったら、ちゃんと地球人になれたら、叶えたい夢。普通の人からすれば簡単で、私にとってはひどく難しい、夢。

 

それは、今までもずっと寄りそってくれた、通訳をしてくれているあの子に、この本をくれたあの子に、「ありがとう」と、伝えること。

 

彼女のことが大好きだった。今までは伝わっていなかったけれど、きっと、今なら、そのことが伝えられるような、そんな気がした。

 

 

伝え方の鉄則

 

報告、連絡、相談、依頼、指示、打ち合わせ……。会社の仕事は、コミュニケーションをベースに成り立っています。「伝える」ことが、あらゆる仕事の基礎にあるのです。

 

ところが、ほんの少し込み入った内容になるだけで伝わらない。いえ、ごくごく簡単な事柄ですら、伝えたつもりが伝わっていない。

 

でも、私はいつも、こう自分に言い聞かせていました。わかってくれない相手を責めても仕方がない。「伝わらない」のは相手のせいではなく、「伝わる」ように話していない自分のせいだ。自分の「伝え方」を工夫すればいいんだ、と。

 

「伝え方」には「型」のようなものがあって、それさえ身につければ、すべてのコミュニケーションに通用するのです。

 

ひとりでも多くの方に、毎日を楽しく過ごしてほしい。そう考えて、この本を書くことにしました。本書は、私が20年かけて磨き上げた「伝える技術」の集大成で、同時に自分自身で常に参考にし、参照している「伝え方の教科書」です。

 

「やり方」さえ身につければ、誰でも「わかりやすく伝える」ことができるようになるのです。これからご説明するのは、もっと深く、もっと汎用的で重要な「伝え方の鉄則」というべき内容です。

 

 

1.「誰に」「何を」伝えるのかを明確にする

2.相手に伝わる日本語を使う

3.正しい順序で話を組み立てる

4.相手に伝わる言葉に言い換える

 

 

ポイントは、この4つです。本書では、これらについてひとつずつわかりやすくお伝えしていきます。

 

「伝え方」に、頭の良し悪しは関係ありません。ただ、「やり方」を覚えればいいのです。そして、日常生活の中で練習をすれば必ず身につけることができます。そのとき、あなたの人生も変わり始めるはずです。

 

 

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