幸せな最期を送るために『在宅ひとり死のススメ』上野千鶴子


人生の最期、というのを、最近はよく考えるようになった。いや、年齢的にはまだまだ先なんだけど。人生百年時代。私は、何歳まで生きるのだろうか。

 

もともと長生きしたくないとは思っていたけれど、松原惇子先生の『長生き地獄』を読んで以降、ますます長生きしたくなくなった。

 

日本の終末医療は、本当に「命を長らえさせるため」だけ。胃に穴を開けられ、無理やり栄養を取らされ、身体も動けないのに心臓だけが動くような状態にされる。日本の病院では、そういった延命治療が当たり前のように行われているらしい。

 

アアなんて恐ろしい。私たちの行く末は真っ暗闇だ。頑張って生きた最期には、そんな地獄が待ち受けているなんて。長生きは恐ろしい。

 

と、思っていたけれど、私の中で、ちょっとした疑問が首をもたげた。いやいや、本当にそうだろうか。寿命が延びるというのは、そんなに悪いことか。

 

その疑問を氷解してくれたのが、上野千鶴子先生の『在宅ひとり死のススメ』である。上野先生はこれまでにも、「おひとりさま」シリーズというのを手掛けてきたらしい。

 

かつて、私たちの寿命は十五歳だった。時は縄文時代のことである。江戸時代でも三十歳前後。昭和ですら五十歳前後が平均的な寿命となっている。

 

現代は人生百年時代とすら呼ばれる時代だ。平均寿命は八十歳を超え、今後は百歳以上生きるのも当たり前になってくるだろうとされている。

 

どうして寿命が延びたか。それはひとえに、普段の食生活が改善されて飢えることがなくなり、衛生環境が整ったことで子どもも健やかに育ち、医療が発展して病気にも対応できるようになったからだ。

 

つまり、寿命が延びたのは人々が頑張ってきたおかげ。それを、「延ばしすぎだ!」なんて怒るのはあまりにも理不尽なんじゃないだろうか。

 

じゃあ、どうして長生きが不幸になっているのか。そもそも悪いのは、延びた寿命に対応した福祉の整備がちっとも進んでいないこと、だと私は思っている。

 

寿命が延びる早さに対して、法の整備が間に合っていないのだ。だから、年金制度もほとんど破綻して、暗い老後が待ち受けているようになった。

 

人生の最期についても、人々の意識が変わっていない。とにかく生きてさえいてくれればいい、という考え方を、そもそも改めるべきじゃないだろうか。

 

人生に幕を引こうとしている老人を、家族は病院に放り込む。介護に対する忌避感と、当人に対する心配と、病院に対する過度な信頼から。

 

病院はそもそも、病気を治す場所である。だから、今にも最期を迎えようとする老人を、「病気」として必死に治そうとする。治らないと知っていても、とにかく生き永らえさせようとする。

 

その結果が胃ろうや点滴という手段だ。そこには、本人の意思がない。その頃にはもう、本人は何も意思を伝えることができなくなっている。

 

家で、ひとりで亡くなっている人のことを「孤独死」という。そして誰もが、「孤独死は嫌だねぇ」と呟くのだ。だから、孤独死しないように家族を呼び寄せたり、子どもと一緒に暮らしたりするようになる。

 

でも、ずっと疑問だった。死ぬ時は誰もがひとりだ。それなのに、どうして人がいることを望むのだろう、と。

 

ひとりで静かに人生を終わる。それが一番幸せじゃないのか。まあ、考え方は人それぞれだから何とも言えないけど、私はそう思っている。

 

誰にも気づかれずに、こっそりと、人生を終える。そんな簡単そうなことが「かわいそうなこと」とされてできないだなんて、生きたくない世の中になったものだなぁ。

 

 

おひとりさまの最期

 

わたしが『おひとりさまの老後』を書いた動機は、年寄りがひとりでいると、それだけで「おかわいそうに」「おさみしいでしょう」という声が降ってくることに対して、「大きなお世話!」と言いたいからでした。

 

その後、あれよあれよと「おひとりさま」人口が増えました。夫婦世帯は死別離別による独居予備軍だと考えれば、近い将来、独居世帯は半分以上になるでしょう。

 

いずれはそうなるだろうと予測はしていましたが、変化のスピードは、わたしの予測を超えていました。

 

大きく変化したのは、夫婦のいずれかに死に別れても、世帯分離を維持したまま、中途同居を選択しない人たちが増えた、ということです。

 

「おかあさん、一緒に暮らさない?」という「悪魔のささやき」を口にしてくれる子どもはいなくなりましたし、それを受け入れる親も少なくなりました。世代間の世帯分離はすっかり定着しました。

 

なぜって? その方が親も幸せ子も幸せ、ということを、お互いに学んだからです。その背後にある大きな原因は、高齢者の一人暮らしに対する偏見がなくなったこと、とわたしは考えています。

 

そんなこと、「おひとりさま」ベテランの人たちはとっくに気が付いていたのですけれど、「家族万歳!」のこの世の中では、大きな声でいうのをはばかれただけ。

 

世の中には、ひとりであることを、撲滅しなければならない悪か何かのように、警鐘を鳴らす本があふれています。

 

単身世帯が増えることは、たんに食い止められない現実です。なら、それを嘆いたり脅したりするよりも、どう前向きに対処すべきかを考える方が大事でしょう。

 

 

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