海外小説の魅力を紹介!『洋書天国へようこそ 深読みモダンクラシックス』宮脇孝雄


 本屋に行くと、私はまず真っ先に小説のコーナーに向かう。そこで目を皿にして本棚を見つめ続けている。

 

 

 私が好きなのはもっぱら日本の小説だ。明治・大正の文学の繊細さには震えるし、現代の若々しい青葉みたいな小説も好ましい。

 

 

 太宰治先生の『人間失格』の内面には共感が重なって思わず悶え、朝井リョウ先生の『桐島、部活やめたってよ』の青春を懐かしむ。

 

 

 夏目漱石先生の『吾輩は猫である』の滑稽さに笑って、有川浩先生の『図書館戦争』の二人の縮まりそうで縮まらない距離にもどかしく思う。

 

 

 芥川龍之介先生の『羅生門』を読んで考え込んで、頭を空っぽにして森見登美彦先生の『新訳走れメロス他四篇』を読んで腹を抱えて笑う。

 

 

 夢野久作先生の『ドグラ・マグラ』の難解さに頭を回して、東川篤哉先生の『謎解きはディナーの後で』のトリックを暴く。

 

 

 谷崎潤一郎先生の『痴人の愛』の愛の形に首を傾げて、片山恭一の『世界の中心で、愛をさけぶ』の愛の形に憧れを抱く。

 

 

 梶井基次郎先生の『檸檬』の発想に舌を巻いて、綿矢りさ先生の『インストール』の常識はずれな発想に絶句する。

 

 

 森鴎外先生の『舞姫』の主人公に内心憤り、小林泰三先生の『アリス殺し』の不思議な不気味さに慄く。

 

 

 樋口一葉先生の『たけくらべ』の初々しい恋愛に悶えて、越谷オサム先生の『いとみち』の主人公の初々しさに和む。

 

 

 日本の小説は昔も今も素晴らしい。それぞれにまた違った魅力があり、作家の思想が垣間見えているのが良いのだ。

 

 

 しかし、対照的に私は海外小説はあまり読まない。日本の小説とは雰囲気がまったく違うからだ。

 

 

 どこか大味で繊細さが足りない。それが私にはひどくもどかしい。だから海外小説を私は読まないのだ。

 

 

 そもそも、私はおもしろい海外小説というものがどれなのかわからなかった。小説というのは今やあまりにも多いのに、おもしろい作品は一握りしかない。

 

 

 日本小説こそ至高である。そう考えていた私は、まったく井の中の蛙でしかなかった。

 

 

 海外小説好きの友人から勧められたのは『洋書天国 深読みモダンクラシックス』という本だった。

 

 

 この本を読んで、私は世界に羽ばたいたのだ。

 

 

日本小説とは違う洋書の魅力

 

 なるほど、海外の小説はやはり国が違うだけあって日本小説とはずいぶんと雰囲気が異なる。

 

 

 しかし、それもまた良いのだと気がついた。海外小説には海外小説なりの良さがあった。

 

 

 それに気付かなかった頃の私はどれほど損をしてきただろう。危うく海外小説の名作を手から零れ落ちてしまうところだった。

 

 

 アガサ・クリスティ先生の『そして誰もいなくなった』の斬新なトリックは初めて読んだ時、ひどく驚かされた。

 

 

 アーサー・コナン・ドイル先生の『シャーロック・ホームズ』シリーズは現代でも根強い人気を誇るエンタメ性を持っている。

 

 

 ダニエル・キイス先生の『アルジャーノンに花束を』は私の涙腺を刺激して、滂沱の涙を流させた。

 

 

 アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ先生の『星の王子さま』は人間として本当に大切なものを教えてくれる。

 

 

 フランツ・カフカ先生の『変身』は真実をたやすく凌駕する現実の恐ろしさを教えてくれる。

 

 

 ミゲル・デ・セルバンテス先生の『ドン・キホーテ』は腹を抱えるほどおもしろいが、込められた真実はひどく深い。

 

 

 ルイス・キャロル先生の『不思議の国のアリス』は今でも大勢の人を不可思議な内容で魅了する児童文学だ。

 

 

 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ先生の『ハウルの動く城』の壮大なファンタジーは幼い子からも愛されるワクワク感がある。

 

 

 J・R・R・トールキン先生の『指輪物語』は現代のファンタジーの下地となるほどの強い影響力を持っている。

 

 

 C・S・ルイス先生の『ナルニア国物語』も映画化されて高い人気を誇ったファンタジーの代表シリーズだ。

 

 

 J・K・ローリング先生の『ハリー・ポッター』シリーズは世代を問わず愛されている作品である。

 

 

 海外小説にもおもしろい作品がたくさんある。自分の中の法律に従っていたままに世界を狭めていてはもったいない。

 

 

 自分の中にある無意識の国境を越えてみてはどうだろう。『洋書天国』は足を踏み出すきっかけとなってくれるのである。

 

 

海外小説の名作を解説とともに紹介!

 

 子どもの頃、実家の隣に小さな本屋さんがありました。もちろん、時代の流れで、今はもうありません。

 

 

 まだ小さかった時、その本屋のおじさんから、本を一冊もらいました。売り物にならなくなった本を持ってきてくれたのだと思います。

 

 

 父は元職業軍人でしたので、小説などを読む習慣はなく、家には実用書が何冊かあるだけでした。活字だけの本を自分で読んだのは、今思えばそれが初めてだったような気がします。

 

 

 『シンドバッドのぼうけん アラビアンナイト物語』という、アラビアンナイトを子ども向けに直した童話集でした。

 

 

 私はその本にすっかり魅了されて、何度も何度も読み返しました。

 

 

 私にとって面白い小説とは、まず、知らない遠い国からやってきた旅人が語ってくる奇想天外なお話でした。

 

 

 高校生になっても、大学に入っても、好みは変わらず、外国の話ばかり読んでいたような気がします。

 

 

 それから四、五十年経って、その頃読んだ小説について書かせてもらったのが、この本です。

 

 

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