まるで牢獄だ。俺たちは罪も犯してないのにオフィスという監獄に閉じ込められ、ただ摩耗していくだけの部品としての一生を終えていく。昨日、隣の席のやつが消えた。いい奴だったのにな。
コロナ禍になる前、「景気がよくなった」と言われていた時期を思い出す。就職氷河期と言われる暗黒時代が終わり、世間が大いに沸いていた。
にもかかわらず、俺の給与明細は、それ以前と何ら変わらなかった。物価は高くなったから、むしろつらくなったくらいだ。
「景気」ってのは、何だ? ふと生じた疑問は、ずっと俺の中を渦巻いていた。世間の人たちが振り回されているこの「景気」という怪物は、いったい何なんだ。
俺たちはどうしてこの「景気」とやらの顔色ばかりを窺っている? 良かろうが悪かろうが、俺たちの生活は何も変わらなかった。ずっと灰色のままだ。
コロナ禍になってからは、あからさまに会社に人がいなくなった。在宅というわけではない。辞めさせられているのだ。
景気が良くても何も変わらないのに、景気が悪くなると俺たちの生活に影響が出てくる。なら、俺たちの生活が良くなるのは、いったいいつなんだ。
ふと、隣の席の引き出しに、何かがはみ出しているのが見えた。鷹のように鋭い上司の視線の隙間を縫って、それを取り出してみると、それは一冊の本だった。
『会社に使い捨てされない法律とお金の心得』と書かれている。俺は興味を惹かれて、自分の鞄の中に入れた。
どうせ彼も会社にもう一度取りに来るのもきついだろうし、メッセージで忘れ物があったとだけ伝えておく。彼に返す前にちょっと読ませてもらっても、構わないんじゃないか?
真っ暗なひとりきりの部屋に帰った時はいつも通りに疲れ果てていたが、今日は寝る前にその本を読むと決めていた。ソファに腰掛け、ページを開く。
まず最初に、「日本経済は全然大丈夫」だという言葉を見つけて、困惑してしまう。生活は楽にはならないし、ニュースでは経済がずっと悪いように言われているのに。
その本によると、今の日本は企業や一部の金持ちがさらに得をするようなシステムになっているのだそうだ。彼らは俺たちが必死に働いたお金を浴びるように使って贅を貪っている。
身が熱くなるような憤怒に駆られた。けれど一方で、「ああ、やっぱりそうだよな」と、納得している自分がいる。
そうだ、俺は気付いていたのだ。このまま何も考えずただ会社に勤めているだけでは、俺は動けなくなるまで使い潰される。
会社にとっての俺たちは感謝も何もする必要がない、ただの歯車。自分たちの懐を温かくするための存在でしかなく、油すら差す気がないのだ。
俺の人生はこのまま灰色から何も変わらず、淡々と終わっていく。思わずぞっとした。それは決して考えないようにしていた未来予想図だった。
どうすればいい。この現状から逃げ出すためには。あのコンクリートビルの牢獄から逃げるために、俺はどうすればいいんだ。必死になって、その本を読み進めていく。
そこには、逃げる方法が書かれているわけじゃない。だが、その本が指さす先には、微かな光明が差しているのが見える。
会社から逃げるのではなく、会社に立ち向かえるようになること。監獄の囚人ではなく、ひとりの人間として、働くことができるような自分になる。この本は、そのためのガイドブックだった。
ひとりきりの部屋で、俺はひそかに戦う決意をした。コロナ禍でも俺を雇ってくれていた会社は、味方じゃなかった。むしろ、俺が立ち向かうべき敵だ。
社会という巨悪。奴らは俺を自分のために働かせることが目的だ。これは俺の人生。他人に使い潰されてたまるか。
会社の中で生き抜くために
昨今、中国などの経済発展で日本の輸出産業などが大きな打撃を受け、「このままではヤバいんじゃないか」と心配している方々も大勢いると思います。
でも、心配することはありません。実は日本経済は全然、大丈夫なのです。しかしサラリーマンの多くは、経済的に決して楽ではない生活をしています。なぜでしょう?
それは、今の日本という国は、国民全体の所得が下がり、一部の人、一部の企業の所得のみが急増するというシステムになっているからです。
彼らは、この大災害、大不況の中でも、何食わぬ顔で金を貯めこんでいるわけです。高度成長以来、我々が汗水たらして働いてきた果実は、みんなこのごく一部の億万長者、大企業がかっさらっていったわけです。
そんななか本書は、サラリーマンのための”本当に役に立つ経済情報”を集める、という趣旨で作っています。どうすれば会社の待遇がよくなり、この先、安心して生きていけるか、ということに的を絞った情報を集めた次第です。
経済には、キレイごとじゃないこともたくさんあります。経済というのは、ただ市場価値だけで動いているものであありません。経済には、「力関係」「人の得体のしれない感情」なども大きく関係したりするものなのです。
サラリーマンにとって、一番大事なことは、”どうしたら会社に対して不利な関係を解消できるか”ということでしょう。
本書は愚にもつかない経済理論ではなく、徹底的に”実用性”にこだわった本です。自分の生活向上のためにも、ぜひ今の状態を変えなければならないのです。その一助になればと、本書を執筆した次第です。
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