ああ、どうしよう。どうしたものか。私は頭を抱えた。胸の中で最悪の想像がいくつもぐるぐる回っている。
私は心配性だとよく言われる。昔からだ。何もかもが不安で、いつ不測の事態が起きるか、気が気じゃなかった。
しかし、実に失礼なことではないか。私は昔から心配性だと言われることに対して不満で仕方がなかった。
むしろ、なぜ誰も彼もが何も考えずに行動できるのか、私には不思議で仕方がなかった。
彼らは失敗を恐れていないのか。彼らは恐怖を持っていないのか。彼らは未来に不安を抱いていないのか。その疑問は、常に私の中にあった。
悪漢に襲われるかもしれない。隕石が落ちてくるかもしれない。財布を落としたらどうするか。彼らに嫌われたらどうしよう。彼女に振られたくない。
未来はつかみどころがない。これをすれば、こうなるだろう。知ったような口を聞くが、実際のところ、未来なんて誰も知りようがない。
もしも、想定外の出来事が起これば、どうするのか。そのせいで、取り返しがつかないことになったら、そして、その責任が私にかかってきたら。
ほんのちょっとしたことでも、私には恐怖でしかなかった。未来に起こりうる可能性は無限で、だからこそ、何が起こっても不思議ではない。
その時、私は、彼らはどう対処すべきか。能天気に笑う彼らがそれを考えているとは思えなかった。
「どうしたの、眉間に皴、寄ってるよ」
ああ、でも、そんなの、いつものことだったね。妻がからかうようにそう言って笑う。私は言い返す言葉を持たない。その通りだからだ。
「そんなに気を張ってちゃあ、しんどいでしょ。あんたの笑顔、しばらく見ていないよ」
妻は私とは正反対の女性だ。彼女の自信に満ちた態度は私にとって憧れで、彼女の理解こそできないものの、彼女に助けられることは多かった。
彼女の言葉に応えるように、口角を上げた。固まり切った表情筋が歪な笑みを作っているのが自分でもわかった。
彼女のように気楽に生きるのは、あまりにも不測の事態に弱い。人生は何が起こるかわからないのだ。彼女に助けられているのは事実だが、彼女の生き方はあまりにもリスクが大きい。
だからこそ、私は自分の神経質を誇りに思っていた。自分が変わることなど決してないだろう。そう信じていたのだ。
心配から解放された生き方を
「いいじゃん、別に。パアッと使っちゃおうよ」
「駄目だ。将来、何か起こったらどうするんだ」
私と彼女が言い争っているのは、お金のことだった。お金を使うべきか、否か。その方法でもめているのだ。
私と彼女は価値観の違いから、何度か意見を衝突させることがある。大抵は私が折れるのだが、この件ばかりは折れるわけにはいかなかった。
なにせ、お金がないというのはあらゆることが絶望的になる。その可能性を招きかねない事態は絶対に引き起こしてはならない。
彼女はあろうことか投資をしようとしていた。恐ろしいことだ。誰に唆されたのかは知らないが、投資なんてものはお金をどぶに捨てるような愚かしい行為だ。
私は貯蓄すべきだと主張した。貯金があるということは、物事への対応がしやすくなるということだ。彼女と私の意見は真っ向から対立した。
「あんたさあ、そんなんで人生楽しいの?」
彼女から言われた言葉が、私の胸に突き刺さったような気がした。楽しいかどうかじゃないだろう。そう言いたくても、言葉に詰まった。
いや、駄目だ。お金を投資に使うなんて論外だ。だまし取られるだけだ。私がそう言おうとした時、彼女がぽんと本を投げ渡してきた。
なんだと思い、タイトルを見てみると、『お金のことでくよくよするな!』と書いてある。
「なんだ、この本は」
私が聞くと、彼女は「貸してあげるから読んでみな。あんたの生き方がどれだけつまんないか、わかるから」と言って、自分の部屋に戻っていった。
たかが本一冊で考え方なんて変わるわけがない。だが、どこか惹かれるところがあるのも事実だった。
妻のように奔放な生き方。憧れたことがない、とは言わない。その答えは。この本の中にあるのだろうか。
心配をしないことで人生が豊かになる
私のキャリアのほとんどは、幸福とそれに関連する事柄の研究と習得、講演と執筆に費やされてきた。人間は幸福を追求する能力を持って生まれてくると私は考えている。
幸福な時は、そうでないときに比べてはるかに人生を楽しめるばかりか、より多くの能力を発揮でき、生産性が高まり、想像力が増す。
怒りや落ち込み、欲求不満、不安に気を取られなければ、人間関係は上手くいき、ストレスは減り、新しいチャンスの扉は開き、すべて順調に事が運ぶようになる。
これと同じ考え方が、成功とお金にもあてはまると気づいたのは五年前だ。そこで私は、専門分野で「成功した」人たちを注意深く観察することにした。
全員に共通していたのは、お金についてくよくよ心配しない態度だった。心配しないという態度は成功の副産物ではなく、成功する前から存在していて、そのゆるぎない自信が彼らの内面からにじみ出ていた。
心配を減らす方策を自分のビジネスに当てはめたら、恐怖心から人に与えるのを躊躇ったりしなくなり、与えれば与えるほど自分にもより多く返ってくることが実感できた。
提供するものがお金、時間、アイデア、エネルギー、あるいは愛情のどれであっても、常に何らかの形で戻ってきて私を助けてくれた。
自分の人生から心配や不安を減らすように努めると、新しい選択肢やものごとのやり方、以前には見えていなかった人生のとらえ方などが徐々に見えてくる。
そうなれば、人生はもっと楽しくなり、さらに多くの人たちを助けることができ、自分の夢見た人生を歩むこともできるようになる。
心配しなくなるだけで、いかに人生が素晴らしくなるか。心配なしの人生は新しい扉を開き、数年前までは思ってもみなかった自由が自分のものになった。とにかく「くよくよしないように!」
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