プレイヤーからマネージャーに『リーダーの仮面』安藤広大


私が変わったのは、あの一冊の本との出会いが全てのきっかけだった。決して届かない壁に初めて出会い、もがき、力尽きて項垂れていたあの頃に、私は出会ったのだ。

 

『リーダーの仮面』というタイトルのその本は、店頭に並べられていた。藍色に金色の字の、どことなく重厚な高級感のある装丁が、不思議と目を引いた。

 

今まであまり本というものを読んでこなかった私がその本を手に取ったのは、ほんの気まぐれ以外の何物でもない。まさか、その一時の気まぐれが全てを変えるとは、当時の私は露ほども思っていなかった。

 

『リーダーの仮面』は、初めて部下を持つようになった中間管理職の人に向けられた本である。「識学」という組織の運営論を駆使してマネージャーのノウハウを伝えるためのものだ。

 

その本は、当時の私の常識を粉々に打ち砕いた。感情を捨て、部下から嫌われようとも冷徹に組織の利益と成長とルールを重んじること。それこそが、その本のメッセージである。

 

当時の私は、若くしてスピード出世をしたゆえの傲慢と、期待に上手く応えることができなかったがゆえの挫折感に打ちひしがれていた。

 

どうすればうまく成果を出せるか。わかっていたはずのそれが、人の上に立つ立場になった途端、何も見えなくなったのだ。

 

部下はひとりひとりが人間だった。同じ目標に向かうべき仲間だった。だからこそ、当時の私は彼らと励まし合い、切磋琢磨し、ともに先に進もうとした。

 

うまくいくはずだった。うまくいくと、思い込んでいた。それなのに、気がつけば、私に残ったのは、何もなかったのだ。

 

一丸となるはずだった彼らの足並みは一向に揃わず、熱意のない者、去っていく者、暴走する者、ともに壁を乗り越える仲間だったはずの彼らが、足を引っ張って邪魔をした。

 

いっそのこと、彼らを切り捨てて私だけでも進もう。私のその決意は、彼らからしてみれば裏切りのようなもの。彼らと私は完全に決別した。

 

なぜうまくいかないのか。社員として働いていた頃の私は、優秀な人間だった。それなのに、どうしてうまくいかない。その理由は、当時の私にはわからなかったのだ。

 

『リーダーの仮面』を読んで以来、私は、自分の間違いに気付いた。そして、仮面を被ることにした。自分の感情を覆い隠し、冷たい仮面で、笑顔を隠した。

 

私がいない時、部下が私のことを悪く言っていることを知っている。だが、感情は動かなかった。もはや、彼らに嫌われることに大した意味はない。

 

仕事。仕事なのだ。仲良しクラブではないのだ。そこをはき違えていた。やるべきことをやる。組織はそのためにあるのだ。私たちは、そのためにいるのだ。

 

私のチームは、会社の中でも着実に成果を挙げていた。まさに破竹の勢いだった。仕事をする。ただそれだけだ。余計なものさえそぎ落とせば、それだけが残る。当然のこと。

 

だから、私はまた今日も仮面を被るのだ。金属のように冷たい仮面で、自分の素顔を隠すのだ。私はリーダー。人の隣ではない、人の上に私は立っている。

 

そこは孤独な道だ。だが、それこそが私のすべきことだった。決して好かれてはいない、事務所の一番奥の席。その場所こそが、その場所だけが、私の居場所。

 

 

仮面

 

この本は、識学のメソッドを元に、「若手リーダー」に向けてマネジメントのノウハウを伝えるものです。初めて部下やスタッフを持つような人、いわゆる「中間管理職」を想定しています。

 

実は、このタイミングは、人生において非常に大事な時期と言えます。なぜなら、社会人になって以降、初めて「他人の人生」のことや「将来のキャリア」について考えるタイミングだからです。

 

最初の「部下との接し方」がマネージャーのキャリアの原点になります。その第一歩目において、リーダーとしてうまくやれるか、失敗するかで、その後の人生で「大きな差」が開いていきます。

 

ですから、本書の内容は、人の上に立つ立場の人であれば、誰しもが気付きを得られるものになっています。

 

まず、若手リーダーに知ってもらいたいことは、「プレーヤーとして優秀だった人であればあるほど、リーダーとして失敗するリスクを抱えている」ということです。

 

部下を目の前にすると、「ひとりの人間」として、たくさんのことを考えてしまいます。仕事のこと。家族のこと。人生のこと。

 

リーダーがフォーカスすべきなのは、「5つのポイント」だけです。それが、「ルール」「位置」「利益」「結果」「成長」です。これだけに絞ってマネジメントをします。カリスマ性も、人間的魅力も不要です。

 

本書の内容は、もしかしたら会社の方針や、さらに上の上司や社長の考え方との板挟みになるかもしれません。しかし、あなた自身が「人の上に立つこと」は、これからの人生も続いていきます。

 

本書で教える「軸」を持ち続けてください。いいリーダーになってください。まだ会社組織の悪いしがらみで頭が固くなっていない「今」だからこそ、本書の方法を学んでいただきたいと思っています。それでは、はじめましょう。

 

 

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