理想的な家族を盲信してはならない『家族という病』下重暁子
父、母、私。三人で食卓を囲む。楽しげに、日々のことを語り合う、仲睦まじい家族。私はその笑顔の下で、気持ち悪さを必死に押し隠していた。
入館ありがとうございます。ごゆるりとお寛ぎくださいまし。
父、母、私。三人で食卓を囲む。楽しげに、日々のことを語り合う、仲睦まじい家族。私はその笑顔の下で、気持ち悪さを必死に押し隠していた。
「もういい加減にして!」「それはこっちのセリフだ!」
別れましょう。妻の口からその言葉を聞いた瞬間、俺の時間は止まったような気がした。
会いたい。その手紙に触れた時、私の心に流れ込んできた想いの奔流は、私を彼の思い出へと押し流していく。
家族といえど、もとは知らない男と女。家族の間にも、決して明かせない秘密というものは一つや二つはあるものだ。
「世の中、賢く立ち回ってこそ、人の上に立つことができるのさ」
吾輩は狸である。名前はまだない。人間の姿で、日がな一日を気ままに過ごしている。