宗教を内側から見つめる『星の子』今村夏子
どうしてこんなことをしなければならないのだろう。そんなことを思いながら、ずっと手を合わせて、祈るふりをし続けていた。
入館ありがとうございます。ごゆるりとお寛ぎくださいまし。
どうしてこんなことをしなければならないのだろう。そんなことを思いながら、ずっと手を合わせて、祈るふりをし続けていた。
ぱんぱんと柏手ふたつ。お賽銭箱には五円を一枚。今年こそどうか、ご縁のありますように。
道端を少し上ったところの、木が生い茂った中に、小さな祠がぽつんと建っている。私はそこから見下ろしていた。
目を閉じると、オラショの声が聞こえるような気がした。暗闇の中で浮かび上がる自らの信じる者に向かって、祈りを捧げる人々の声が。
「私たちは今、この世界にたしかに生きている、という疑いようのない確証を、果たして君は持っているのか」