狂気の問題作『時計じかけのオレンジ』アントニイ・バージェス
彼は残酷な男だった。
入館ありがとうございます。ごゆるりとお寛ぎくださいまし。
彼は残酷な男だった。
芸術というのは怖ろしいものだ。人は人生の中で一度――あるいは一度もないか――自分の人生を一変させるほどの作品に出会うという。
本屋に行くと、私はまず真っ先に小説のコーナーに向かう。そこで目を皿にして本棚を見つめ続けている。
「今、授業でやってるやつさあ」 「あ、なんだっけ、『走れメロス』だっけ」 「あれ、あたし、好きじゃないんだよね。なんか暑苦...
吾輩は猫である。名前はまだない。猫の目から見た人間とはなんと皮肉であることか! 吾輩は猫である。名前はまだない。書生の手によって家族...
私は激怒した。いや、これは怒髪天を衝くよりも悲しみに押し流されているのが正しかろう。
「なあ、君、恋慕とは罪だ。そうだろう?」
「まだ結婚しないの?」 母からの結婚の催促も、もう聞き慣れたものである。私は良い相手がいないものだからと断った。
「つまり、僕のとっておきのプリンを食べた犯人は君ということさ」
幼い頃の私が愚鈍であったことを、私の今の姿から想像することは到底できないだろう。