身近な人の死と向き合う『キッチン』吉本ばなな
祖父が亡くなったときのことを今でも覚えている。母方の祖父は私の覚えのある頃にはもういなくて、私の知っている祖父はひとりだけだった。
入館ありがとうございます。ごゆるりとお寛ぎくださいまし。
祖父が亡くなったときのことを今でも覚えている。母方の祖父は私の覚えのある頃にはもういなくて、私の知っている祖父はひとりだけだった。
「さて、それでは計画を詰めていこうか」
私は甘いものが好きである。ケーキやクッキーといった洋菓子も悪くはないが、風情のある和菓子もまた、好ましい。
大きめの窓を厚手のカーテンが覆い隠している。一筋の日の光すら入ってこない部屋はどこかじめっとした湿り気があった。
1969年。かつて、活力溢れるこの年は、果たしてどんな出来事が起こったのだろうか。
「なあなあ、これって絶対UFOだよ、なあ!」
「暴力はいつだって悪いのか」
私は疲れた身体を引きずって帰路についていた。雨上がりの水たまりに映る私の顔はまるで幽鬼のように顔色が悪い。
たまには、のんびり旅行するのもいいものだな。私はバスに乗りながらそう思った。
先生が壇上でよくわからない数式を説明している。俺は面白くない学校の授業を右から左に聞き流しながら考えていた。