傷を癒すために『居るのはつらいよ』東畑開人
「何もしなくてもいいよ」
入館ありがとうございます。ごゆるりとお寛ぎくださいまし。
「何もしなくてもいいよ」
世の中はなんて生きづらいのだろう。「らしさ」を求められて、「自分」を出したら見放される。それなのに、「個性」を大切にだとか、偉そうなこと...
会社を辞めたあの日、最後の出勤日を終えて外に出た時、私は今後への不安と開放感を感じたことを思い出す。
私は疲れ切っていた。日々の生活に。生きていくことに。そんな時、一冊の本が目に入った。
言葉は強い力を持つ。落ち込んだ人を救い、愛を囁くこともあれば、無数の見えないナイフとなって、前触れもなく心を突き刺してくる。
こんなものがあるから。ぼくは自分の手の中にある紙切れを握り締める。描かれた偉人の顔がくしゃくしゃに潰れた。
私は途方に暮れて立ち尽くしていた。私の手の中にある羅針盤の針は、くるくると回るだけで、どこも指示してはくれない。
僕たちはテレビに絶対の信用を置いている。テレビが言うことに間違いはないと盲信している。けれど、テレビは本当に信じられるようなものなのだろ...
この世でいちばん大事なのは「金」だ。いくらきれいごとで自分を誤魔化したって、心の底では誰もがそのことを知っている。
ああ、わからない、わからない、わからない。散々頭を悩ませた挙句に、私は数日も徹夜して書いた文章を削除した。