不思議なものだと思う。見下ろした自分の手のひらの、この柔らかい肌の下に、赤い血液が休みなく流れている。とてもそうは見えないのに。
私がふと、そんなことを意識するようになったのは、小林弘幸先生の『流せる人は人生もうまくいく』という本を読んでからだった。
そのタイトルを見た時、最初、私は人間関係における「流せる」なのかと思った。だから、血流の本だと知った時には少しがっかりしたものである。
それでもその本を読み進めたのは、ただの意地に近かった。けれど、今はその自分の行動は結果的に良かったのだと思っている。
その本はお医者様が書いた一冊らしく、専門的な血流の話が詳細に語られていた。私には少し難しかったけれど、勉強にはなる。
健康を良くするためには、血流の問題は避けて通ることはできない。不健康な生活をしている自覚のある私のなんて、さぞドロドロしていることだろう。
それをサラサラにできる方法があるのなら、まあ、読んで得したこともあったかな、と思っていた考えが変わったのは、「血流が心理状況にも関係ある」と書かれていたことである。
ストレスを感じると、末端の血液が収縮し、血流が悪くなるらしい、つまり、私が勘違いした通り、人間関係上の悩みを「受け流せる人」になるのも重要だということだ。
精神と身体は別物ではない。そのどちらも合わせて「私」なのだ。それらはつながっていて、精神に不調があれば体調も悪くなり、身体の不調につられて精神も落ちていく。
どちらを治せば、ではなくて、どっちも大切にしないと、「健康」とは言えないのだと、私は知った。
私は受け流すのが苦手だ。人の言葉や行動は、嫌味や悪口や冗談であっても、どれも蔑ろにできず、真剣に受け取ってしまう。
頼みごとを断ることができない。誘いに気乗りしなくても、みんな頷いてしまう。
今まで、そのことで嫌な思いをしたこともあった。そんな自分を何とかしたいと思っていた。どうにもできないのは、私自身の心の問題だと。
私は自分の手のひらを見下ろした。この皮膚の下では、私の命の血潮がとめどなく流れている。
けれど、その流れは、きっと滑らかではないのだろう。迷い、惑い、足踏みしながら、流れているに違いない。
私が迷えば、血の流れも迷う。それは、いずれ心の問題だけにとどまらない、命にもかかわる病となって私を蝕んでいくのだ。
心の問題は本人の問題。所詮は気の持ちよう。そこまで大きな影響なんて出ない。
今まで言われてきた言葉を思い出す。私を苦しめてきた、言葉の数々。それらを私は受け流すことができず、真正面から受け止めて、傷ついてきた。
目には見えない、けれど、たしかに私の心は血を流している。精神の血流が、外へと流れ出ている。
彼らは間違えている。大人の言うことが、いつだって正しい、わけではないのだ。私はそう思った。
その途端、私はふっと、自分の身体が軽くなったような気がした。不思議に思って自分の身体を見下ろしても、何も変わったところはない。
でも、たしかに変わった。きっと、それは、この皮膚の下で、迷っていた私の血流が、しっかりと前を見てサラサラと流れ始めたかもしれない。
サラサラと流れる人生を
突然ですが、「健康」とはなんでしょう? 私は、それを「血液がサラサラと流れていて、全身の細胞にきちんと栄養が行き渡っている状態」だと考えます。
しかし、血流はさまざまな原因によって、滞り、血液の質が悪くなってしまいます。これによって、細胞の状態も悪くなり、病気や不調を呼び起こすのです。
血液の中には「生きる源」が含まれているのですが、自律神経のバランスが崩れることで、血液の質そのものも変わってしまいます。つまり、血液をサラサラと「流せる人」こそが健康であると言えるのです。
そして、本書のキーワードでもある「流せる人」には、もうひとつ、「物事を受け流す」という意味も込めています。
人生には、嫌なことや不快なこともたくさんあります。しかし、そうしたさまざまな出来事にとらわれ過ぎず、時には受け流してしまうことは、医療にとっても非常に重要な意味を持っているのです。
心配事や嫌なことがあると末端の血管が閉じてしまい、血流も滞ることが明らかになっています。つまり、人生を受け流せることと、血液の流れというのは密接に関係しあっているのです。
血流をサラサラと流せている人は、ストレス物質などが押し流されるため、物事を受け流しやすくなりますし、物事を受け流せる人は血管が開いているので、血液もサラサラと流せるようになるのです。
「流せる人」は、健康も人生も順調にいく。今、心よりそう思っています。
血流をケアすることは、自分自身をいたわることです。澱みのない血流は、そのまま、健康で澱みのない人生につながると、私は考えます。
本書が、皆様の人生を高める一助になれば、医師としてこんなに幸せなことはありません。
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