文房具と鼬の戦い『虚航船団』筒井康隆
その本をひっくり返すと、まず文字がばらばらと散らばる。鋏や、下敷きや、消しゴムなどの文房具が零れ落ち、そして獰猛な鼬が何匹も、するりと逃げ...
入館ありがとうございます。ごゆるりとお寛ぎくださいまし。
その本をひっくり返すと、まず文字がばらばらと散らばる。鋏や、下敷きや、消しゴムなどの文房具が零れ落ち、そして獰猛な鼬が何匹も、するりと逃げ...
無数の歯車が回り、カタカタと駆動音がかすかに響く。どこかぎこちなくも滑らかに動くからくり人形の無垢な面差しを、私は睨みつけるように見つめた...
ウイルスに悪意はない。その言葉は、さて、何かで見たような気がするのだが、どの作品だったろうか。
ソファに腰かけて新聞をめくる。今日も依頼人は来る気配がない。新聞に載っている記事は今日も平和だ。つまらん。
今まで私は忠実な犬であり続けた。しかし、一度だけ、私は国に嘘を吐いたことがある。この書は、私の罪の吐露と認めてくれて構わない。
かつて、私は『ピーター・パン』の世界に憧れたことがある。夜、大人が寝静まった頃に、ピーター・パンが迎えに来てくれないかとドキドキしながら...
何度憧れたことだろう。この戦いから解放された日々のことを。ゆっくりと眠ることができる、平和な世界を。
彼女との思い出はそう多くはない。出会ってから彼女が亡くなるまでの、ほんの数か月。けれど、私は生涯を通して、彼女のことを決して忘れないだろ...
私がその男を初めて見たのは、祖父の古いアルバムだった。生前の祖父が、学友たちと撮影した白黒の集合写真。そこにはたしかに、彼の姿があった。
ああ、なんてことだ。私は頭を抱えた。このままでは歴史が変わってしまう。その時、果たして私の元いた時代はどうなるのだろうか。