子どもになってしまった名探偵『名探偵コナン』青山剛昌


 ソファに腰かけて新聞をめくる。今日も依頼人は来る気配がない。新聞に載っている記事は今日も平和だ。つまらん。

 

 

 探偵と言えば、なんて聞かれたら、お前さんはなんて答える?

 

 

 やはり、一番人気なのは『シャーロック・ホームズ』だろう。ザ・名探偵。コナン・ドイルが生んだ名探偵の金字塔だ。俺ァあまり好きじゃないが、人気があるのはわかるさ。

 

 

 あるいは、『エルキュール・ポアロ』なんてのもよく知られているな。ミステリ界の女帝アガサ・クリスティの生んだ紳士だ。といっても、クリスティはうんざりしていたらしいがね。

 

 

 日本で言うならどうだ。江戸川乱歩の『明智小五郎』ってのがいるぜ。気障な奇人さ。日本のホームズっていやあコイツだろうよ。

 

 

 渋いところでいやあ、金田一耕助がいるなァ。日本の三大名探偵のひとり。俺ァあまり好きじゃねぇけどな。ちょっと怖いじゃん、横溝正史。

 

 

 と、つらつらと並べてみたところで、実は俺が一番尊敬している探偵は『名探偵コナン』なんだがな。俺が探偵になったのも、コナンに憧れたからだ。

 

 

 いやいや、ふざけているわけじゃねえさ。古典文学ばかりが良いわけじゃねぇ。漫画だろうが、おもしろいもんはおもしろい。そうだろう?

 

 

 そもそも、どいつもこいつも探偵ってのは、どうしてあんなにもバケモンみてェな奴ばっかりなんだよ。

 

 

 俺がホームズが嫌いなのもソコだ。あまりにも完璧すぎて、むしろぞっとするね。最近のネット小説でも見ているような気分だ。

 

 

 ポアロも、金田一も、明智も。やってることァ人間業とは思えないことばかりだ。探偵ってのは超人しかなれねぇのかよ。まったく嫌になるよな。

 

 

 じゃあコナンはどうかってなると、コイツも相当だ。だけど、他の探偵みたいに思えないのは、きっと子どもになっているからかもな。

 

 

 何より、好きな女のためにってのが良いもんだ。やっぱり探偵の物語といやあ、そういうロマンスがなくっちゃな。

 

 

 たまんないのは、コナンと、ヒロインの蘭が、高校生らしい甘酸っぱい恋愛をしているんだよな。他の気障な大人の探偵にはない、名探偵コナンだけの魅力だ。

 

 

 互いに大切に想っていて、けれど、だからこそ、正体を知られるわけにはいかない。近くにいるのに、相手との距離は、どこまでも遠い。

 

 

 俺はコナンみたいに事件を解決したかったんだ。だから探偵になった。探偵になって、華麗に推理して、事件を解決したかったんだ。

 

 

 だが、現実はどうも、そんなに甘くないらしい。依頼人なんて滅多に来やしねぇ。今日みたいな閑古鳥なんて珍しくもなんともない。経営はいつだって火の車だ。

 

 

 そもそも、なってから知ったんだが、どうやら日本では探偵は「情報を調べる」職業であって、事件の推理なんてしないんだそうだ。まじかよ。

 

 

 入ってくる依頼は人探しや浮気調査ばかり。あーあ、物語みたいに、なんて上手くいかないもんだねェ。

 

 

 なんて思っていたら、外から足音が聞こえた。いつも思うけどここの階段、オンボロだよな。

 

 

 足音はひとり。体重は軽い。女性かもな。初めて来る客だ。階段を上るのにも躊躇っているような間がある。

 

 

 扉の前で深呼吸するような声がした。やっぱり壁薄いよな。予想していた通り、女性。しかも、思ったよりも若い女だ。

 

 

 ガチャリとドアノブが捻られて、いかにも恐る恐るというふうにそうっと扉が開かれた。

 

 

 隙間から顔を覗かせるのは、まだ子どもだ。制服を着ている。まさか学生が来るとは思わず、俺は内心で驚いた。しかし、俺もプロだ、そんな動揺は表に出さない。

 

 

 俺は新聞を閉じて、彼女の方を向く。頭の中で、憧れた名探偵の雰囲気をイメージしながら。

 

 

「よお、何か依頼かね?」

 

 

江戸川コナンの誕生

 

 俺は高校生探偵、工藤新一。幼馴染の毛利蘭と遊園地、トロピカルランドに遊びに行ったとき、ジェットコースターの後ろに座っていた男が亡くなってしまう。

 

 

 警察が駆けつけた中で、俺は推理をし、見事に犯人を突き止めた。犯人は逮捕され、無事に事件は解決した。

 

 

 しかし、帰り際に怪しい男を目撃する。それは、ジェットコースターの最後尾に乗っていた黒ずくめの二人組のうちのひとりだった。俺は蘭と別れて男の後を追う。

 

 

 俺はそこで男の怪しげな取引の現場を目撃してしまう。証拠の写真を撮っていた俺は、背後から男の仲間が近づいてくることに気が付かなかった。

 

 

 頭を殴られて倒れた俺は、男に、薬を飲まされてしまう。骨が溶けているかのように体が熱くなり、俺はそのまま気を失った。

 

 

 集まってきた人の声。どうやら、薬によって命を奪われることはなかったらしい。

 

 

 しかし、目を開けた俺は愕然とした。身体が縮んで、子どもになってしまっていたんだ。

 

 

 目撃した取引や、自分が高校生だということを必死に伝えようとしても、誰も信じてくれない。

 

 

 俺は自分の家にも入ることができず、隣に住む発明家の阿笠博士を頼る。しかし、彼にも薬の成分がわからないと、元に戻す薬は作れないらしい。

 

 

 もしも、工藤新一が生きていると彼らに知られたら、また命を狙われる。周りの人間にも被害が及ぶだろう。

 

 

 博士からそう言われ、正体を隠すことを約束する。しかし、そこへ心配した蘭が訪ねてきた。

 

 

 名前を聞かれた俺は、咄嗟に「江戸川コナン」と名乗り、父親が探偵をしている蘭の家にころがりこむことになった。

 

 

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