母親1人に父親4人!『オー! ファーザー』伊坂幸太郎
父親、というのは、いったいどんなものなんだろう。それは、僕が子どもの頃からずっと疑問に思い続けていたことだった。
入館ありがとうございます。ごゆるりとお寛ぎくださいまし。
父親、というのは、いったいどんなものなんだろう。それは、僕が子どもの頃からずっと疑問に思い続けていたことだった。
僕には兄がいる。二歳ほど年上の兄だ。もう長い間、僕と兄との間に会話はない。僕は兄のことが、たまらなく嫌いだった。
ジュリエットとジュステーヌ。悪辣な姉は富と権力を手に入れて享楽に溺れた日々を過ごし、善良な妹は骨の髄まで食い尽くされた挙句に女囚の身に墜...
スーパーに並んでいる肉を、私は見下ろした。ふと、思う。よく考えてみれば、私はこの『肉』というものの正体を、何も知らないのだ。
私はその本を手に取る前、そんなに怖くないだろうと思っていた。たかがストーカーなんて。怪物でも幽霊でもなく、所詮は人間じゃないか、と。
私は正義の味方に憧れて、警察官になった。しかし、私たちの敵が犯罪者だけでないことを知ったのは、大人になってからのことだ。
「ひとつの物事も別の視点から見たら、まったく変わってくることだってあるよな」
「電車の中ってのは密室みたいなもんだよな」
「『モダンタイムス』って知ってるか。伊坂のじゃないぞ。チャップリンの。ほら、あの歯車でくるくるするやつ」
家族といえど、もとは知らない男と女。家族の間にも、決して明かせない秘密というものは一つや二つはあるものだ。