「老後の資産形成のために、今こそ投資信託を始めるべき!」「絶対に損はさせません!」「安心安全なのは投資信託だけ!」投資信託を調べると、勢いのある美辞麗句が並ぶ。でも、それって本当なのだろうか?
投資信託は、多くの人から集めた少額を投資金としてプロの投資家が投資し、その利益を分配金として還元する、というもの。
自分で投資する必要もなく、プロの投資家がやってくれるから安心。自分の時間をとられることなく、資産形成をすることができるのが魅力の金融商品だ。
あなたも、証券会社から宣伝広告のメールやチラシが送られたことはないだろうか。あるいは、銀行の営業マンから投資信託を勧められたことはないだろうか。
私はある。銀行の営業マンから資料まで渡されて投資信託を勧められた。正直なところ、私は誘惑に弱い。もしかしたら、彼らの誘い文句に乗せられていたかもしれない。何も知らなければ。
だが、一見すればお得なように見える投資信託には、巧妙に隠された罠がある。それを教えてくれるのが、週刊ダイヤモンド様で掲載された『投資信託の罠』という本だ。
私はつい数週間前にその本を読んだばかりだったから、記憶にも新しかった。本当に危なかったとしか言いようがない。私はただ、運が良かったのだと言える。
銀行員や証券会社はしばしば営業の一環として投資信託を勧めてくる。だが、彼ら自身が自分の売っている商品についてよく知っているかといえば、そんなことはない。彼らの言葉には無知や嘘が織り交ぜられているのだという。
彼らが声高々に勧めてくる投資商品は、手数料が高く設定されている。つまり、買った側ではなく、銀行や証券会社側が儲けることができる商品を彼らは勧めているのだ。
もちろん、彼ら自身、それが良い商品だと思っているわけじゃない。かといって、悪い商品だと知ったうえで売りつけようとしている人も、ほんの一部だろう。
ほとんどの営業マンは、会社に多く売るよう勧められている商品を、よく知りもしないまま、会社に言われるがままに売っているのだ。
だから、彼らの言葉には何の責任感もない。知らないから質問には答えられないし、平気で嘘も吐く。それも全て、彼らにとってはお客様のためではないが、「仕事だから」という言い訳で何もかもを乗り切ることができる。そんな土壌がすでに出来上がっているのだ。
会社が得をするようにされている投資商品は複雑なシステムをしている。だからこそ、営業マンたちもそのシステムを明朗に説明できない。時には、顧客よりも無知であり、しかもそのことを恥にすら思わない営業マンすらいるという。
『投資信託の罠』は、営業マンに対する顧客の不満や、売っている営業マン自身の意見、投資業界の今後など、さまざまな視点、意見で論じられている。
営業マンの勧める投資信託は危ない。この本は一貫してそう伝えている。だが、ひとつ、誤解がないように付け加えておきたい。
この本は投資信託の危険性を訴えたものであるが、一方で、「投資をするな」とは言っていないのだ。そもそも、この本を書いたのは週刊ダイヤモンドの中でも金融商品を取材している、いわば専門家である。
年金制度と終身雇用が崩壊してしまった今、私たちの老後の生活はますます厳しくなっていくだろう。なにせ、定年を迎えた後も三、四十年も人生は続くのだ。その時期を乗り越えるための資金形成を、早くから考えておかないといけない。
投資はそのための手段のひとつである。しかし、その実態は、証券会社や銀行の利益しか見ていない商品が飛び交う魔窟と化していて、初心者はおいそれと手が出せるものではなくなっている。
投資は危険だ。そんな投資そのものへの忌避感が跋扈しているのも、利益のみを重視し続けて顧客を見ることを忘れた彼らの所業から生まれた現実なのではないだろうか。
彼らに資産を食い潰されることなく、資産を形成していくにはどうすればいいだろう。そのためには、知識が必要だ。学べば、危険は避けることができる。知らない人だけが、損をするのだ。
投資信託に隠された罠とは
本書は『週刊ダイヤモンド』の特集記事を再構成したものである。発売後の反響は大きかった。さまざまな年齢層の読者から評価をいただき、はがきや電話で激励の言葉を頂戴した。
「ずっと手元に置いておきたい」「よくぞここまで書いてくれた」――。雑誌の作り手として、これほど嬉しい言葉はない。
逆に、投資信託会社からは辛辣な声が届いた。「”罠”とは何だ! 中身が偏向している」「なぜ、投信を目の敵にするのか?」――。
むろん、私たちが投信を目の敵にする理由はない。しかし、大いに問題を抱えていると考えている。
投信という金融商品に、強いニーズがあるのは間違いない。だが、中身を注意深く見てみると、高コストの商品、お客や一般投資家の勘違いに付け込むような商品が少なくないことがわかる。
そんな現状で本当にいいのか? 投信業界が健全に発展していくためには、作り手も売り手も、もっとお客に対して誠実であるべきではないか――。これが本書のメッセージである。
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