どんなに苦しくても、生きるという決意『晴天の迷いクジラ』窪美澄
クジラは老衰で弱ってきて、寿命が近づいてくると、陸の方に上がろうとしてくるのだという。
入館ありがとうございます。ごゆるりとお寛ぎくださいまし。
クジラは老衰で弱ってきて、寿命が近づいてくると、陸の方に上がろうとしてくるのだという。
私は鏡に映る自分の髪の毛を見た。耳を隠すボブカット。今まで、手入れが面倒だとそれ以上伸ばそうとはしなかった。けれど今、それがどこか惜しく...
遠くかすかに浅間山が見える。軽井沢は避暑地としても有名らしいと知ったのは、来ると決めて電車に乗った後のことで、私は夏に来ればよかったと、...
貧乏になるのも嫌じゃ、病気にかかるも嫌じゃ、死するのはもっと嫌じゃ、ましてや、その三つが立て続けに起こったならば。
その村では、何十年かに一度、角の生えた子が生まれてくる。その子が十三歳になった時、生贄の刻は満ちた。”霧の城”にニエを捧げよ。
本屋で眺めていて、そのタイトルは妙に心に残った。ようやく手に入れたその本が、実はシリーズものだと知って私は愕然としたのである。
学生の頃に読んだ物語が、ずっと頭の片隅に残っている。読んだ直後に胸中に溢れていた不快な感情が、何年も経った今でも尾を引いていた。
耳につけたイヤホンから、幻想的な音楽が聞こえる。柔らかく透明感のある声。私は目を閉じて、その世界観に身を沈めた。
お前に、この謎は解けるか? その文字からは、美貌の少女の挑戦的な声が聞こえたような気がした。
昔から辞書が嫌いだった。文字が小さくて読みづらいし、重たくて運びにくい。辞書が必要だと言われたら、思わずげんなりする。