なぜベストを尽くさないのか『どんと来い、超常現象』上田次郎


 私は天才である。しかし、世の中はまだ私の才能に気がついていない。だが、それも遠い話ではないだろう。

 

 

 というのも、私は今からかの歴史に名を遺した数々の文豪すらも凌駕する稀代の傑作の執筆にとりかかるからである。

 

 

 作品はすでに出来上がっている。私のこの才知溢れた頭の中には苦節十年にも及ぶ大長編が脈々と執筆されていたのだ。

 

 

 あとはそれを作文用紙に書き上げるだけでよい。世の中は新たな天才が水面下で蠢いていた事実に、今こそ気づいて戦慄するであろう。

 

 

 さあ、諸君! 喝采の用意はできたか! 子どもはジュースを用意しておくとよい!

 

 

 私の作品は世の中のあらゆる真実をことごとく内包している。ゆえに、この作品は世の中の一切を天地がひっくり返るがごとく変貌せしめるであろう。

 

 

 今この時、世界は終わり、新たな世界が始まるのだ。ほかならぬ私の手によって。

 

 

 私の才能に比肩しうるべき者はいないだろう。しかし、もしも強いて名を挙げるならば、日本科学技術大学の教授である上田次郎氏を述べさせていただく。

 

 

 なるほど、彼もまた、私と同じく天才である。はるか先の未来まで見通す先見の明があり、アイスピックのごとく鋭利な観察眼を持った優秀な御仁だ。

 

 

 通信で習ったという空手の腕は随一で、屈強な男どもを一瞬にしてなぎ伏せるだけの実力を持っている。

 

 

 それらの能力は超能力者を名乗る不届き者を成敗する正義のために執行されているらしい。

 

 

 そんな彼の半生は彼の著作に書かれている。『どんとこい、超常現象』という本である。

 

 

 こんなにも素晴らしい本であるというのに、返品されることが多いらしいのは何故だろうか。

 

 

 きっと世の中はまだ彼の才能に気づいていないのだろう。なんとも皮肉なことである。

 

 

時代の先を行け!

 

 私は突っ返された小説が書かれた数十枚にも及ぶ作文用紙をくしゃくしゃに丸めてゴミ箱の中に放り込んだ。

 

 

 パソコンを開く。マウスを滑らせて小説投稿サイトのマイページを開いた。私の書いた小説がそこにある。

 

 

 そこにはあまりにも少ない閲覧者数を誇る私の自慢の小説があった。ふむ、と顎に手を当てて私はページを閉じてパソコンの電源を落とした。

 

 

 ふむ、と私はまた呟いた。執筆した小説はどちらも世界に知られたのだ。その評価は散々たるものであった。

 

 

 なるほど、すなわち世の中はまだ私の才能を受け入れるだけの土壌が用意しきれてなかったということか。

 

 

 これは私のミスである。気が急いたがゆえに、あまりにも時代を先取りした本を出してしまった。

 

 

 上田次郎氏もまた、同じであったろう。彼がその溢れんばかりの才能を評価されなかったのは、ひとえに世の中が彼のあまりの巨大さを受け入れられなかったがためである。

 

 

 だからこそ、一部の人間は彼の才能に気づき、賛美した。よって、彼は名声を得たのである。

 

 

 私もまた、時が解決してくれるであろう。私の才能を許容するには、あまりにも世界が未熟過ぎたのだ。

 

 

 優れた人間にとって世界はあまりにも狭すぎる。ならば、私はこの大きな存在を世界のサイズにまで縮めなければならない。

 

 

 世界はあまりにも窮屈である。しかし、いつかは世界が私に追いつくだろう。その時になって初めて世界は前を行く私の背中に気づくのだ。

 

 

 今はただ、孤独に歩き続ければよい。時代が私の高みに届くまで。

 

 

天才物理学者上田次郎

 

 上田次郎は幼い頃から天才だったわけではない。むしろ、体力的学力的に他者に劣る劣等生であった。

 

 

 しかし、天狗岳の頂上で、父から「お前の先祖は天狗だ」と発破をかけられ、彼の才能は開花し始める。

 

 

 学習面において優秀な成績を挙げた彼は健常な食生活により恵まれた肉体を得た。

 

 

 カラテの免許皆伝を手にしたのもこの頃である。

 

 

 中学時代は成就しなかった恋愛の悲しみを所属していた科学部に注力し、4人のエリートの友人とともに学校生活を過ごした。

 

 

 日本科学技術大学に首席合格し、新入生総代として華々しくキャンパスライフを幕開いた彼は尊敬する恩師のもとで物理学に勤しむ。

 

 

 大学で巻き起こった権力闘争による恩師との別れを経て、彼は物理学界で大いに名を上げた。

 

 

 彼と霊能力者との闘いはこの頃である。

 

 

 ミラクル三井による村人の消失事件。千里眼を持つ男の正体。サイ・トレイラーとの直接対決。

 

 

 彼が今まで解決してきた事件は列挙していくときりがないだろう。

 

 

 それはやはり、彼が物理学の天才であるが故に引き寄せられてしまうのだろうか。

 

 

 悪意ある偽りの霊能力者が現れると限り、彼は闘い続けるだろう。

 

 

 正義感の強い彼が力弱き者を騙して不幸にする存在を黙って見ているはずがないからだ。

 

 

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