人間の滅んだ世界で罪を犯した「人でなし」だけが生き残った『パライゾ』阿川せんり
あの瞬間のことを、今でも夢に見る。目が覚めた時はいつも汗で濡れていて、サイレンの音を、遠くに聞くのだ。
入館ありがとうございます。ごゆるりとお寛ぎくださいまし。
あの瞬間のことを、今でも夢に見る。目が覚めた時はいつも汗で濡れていて、サイレンの音を、遠くに聞くのだ。
寂しかった。ずっと、ずっと。けれど、何も上手くいかない。私はずっとひとりぼっち。今までも、これからも。
変わりたい。何度もそう思っては、挫折してきた。もっと時間があれば。もっと余裕があれば。言い訳の言葉は、壁にぶつかって消えていくだけ。
敵になることを運命づけられた二人。それは決して許されない想いだった。
戦争はいけないことだと、誰もが言っている。それなのに、どうしてこの世界から戦争がなくならないのだろう。
彼らと私たちの、何が違うというのだろう。私たちは何もしていないのに、種族の違いはそんなにも大切なことなのだろうか。
何度も、何度も、悲劇は繰り返されてきた。これが運命だというのなら、なんて残酷なのだろう。
扉を開けると、涼やかな鈴の音が私を迎えた。靴を脱いで、奥へと入っていく。
会いたい。その手紙に触れた時、私の心に流れ込んできた想いの奔流は、私を彼の思い出へと押し流していく。
激しい咳が聞こえる。息できないと叫びたくても叫べない、そんなことすら思わせる咳に、思わず閉ざす扉を開けて駆け寄りたくなってくる。