狂気から目覚めた男の末路『将軍が目醒めた時』筒井康隆
葦原金次郎という男がいる。埼玉県で暮らしていた平々凡々な櫛職人の男である。彼のことを、人は嘲笑と侮蔑と畏敬を込めて、「将軍」と呼ぶ。
入館ありがとうございます。ごゆるりとお寛ぎくださいまし。
葦原金次郎という男がいる。埼玉県で暮らしていた平々凡々な櫛職人の男である。彼のことを、人は嘲笑と侮蔑と畏敬を込めて、「将軍」と呼ぶ。
幼い頃、怖くて眠れなかったことがある。眠ろうとすると、夢の中に出てくるのだ。こちらを黒い瞳で見つめる、青白い裸の少年。その映像が、頭から離...
「こぶ天才」という小説がある。筒井康隆先生の『宇宙衛生博覧會』という短編集に収録されている作品のひとつである。
隣から穏やかな寝息が聞こえる。まるで人形のように目を閉じて眠るルームメイトを、私は羨望を込めて見つめた。眠りたいのに、眠れない。それがこん...
姑獲鳥と書いて、「うぶめ」と読む。雨の降りしきる中、おざなりに子どもを抱いて、どこか寂しそうな表情をした女。『図画百鬼夜行』に描かれたその...
子どもの頃、妖怪がたくさん描かれた絵本を夢中で読み耽っていたことがある。みんなが夢中になったアニメや特撮なんかよりも、それを読んでいた時の...
ウウン……怖い話、ですか。怪談の季節には少しばかり遅くないですかね。ハァ……まあ、ないわけではないですよ、ハイ。ええ、話すのは構いません。...
「笑うなって言われたら、なんか笑っちまうよな」「そうだな」「笑うなって言われたときほど、なぜか面白いんだよな」「そうだな」
昔、「テレビの撮影が来てる」と聞いた時、友だちと騒ぎながら見に行ったのを覚えている。うっかりテレビに映ったらどうしよう、とか考えてドキドキ...
三年ごとに、それは起こる。夜見山北中学の三年三組の生徒が、信じられないような不幸の連鎖によって次々に命を落としていく。〈現象〉、あるいは〈...