勤めていた会社に税務署が来るらしい、と耳にしたのは、つい先日のことである。大した反応を返すことができなかったのは、税金についての知識が私に乏しかったからだ。
税務署が来る、ということにいい印象はない。税金を追加でとられるんじゃないか、とか、会社にアヤシイところがあるのでは、とか。
ふと思い至る。私は税金のことについて何も知らない、ということに。そして、途端にその事実に危機感が湧いてきたのである。
税金は誰しも支払う義務があり、無関係であることは許されない。それを、よく知らないままに支払っているというのは、転じれば、何の理由もなく多くとられても気づくことができないということじゃないのか、と。
税金のことを、学ばなければならない。どんなものが税金としてとられているのか。税金がどう使われているのか。税務署は何のために来て、何をするのか。とられる税金を、少なくすることはできないのか。
そういう疑問を解決するために、私が図書館から借りてきたのは一冊の本である。大村大次郎先生の、『税務署員だけのヒミツの節税術』というタイトルだ。
著者の大村大次郎先生は、元税務署員であるらしい。そして、この本は、かつて職務として税金を扱ってきたからこそ持っている知識を、詰め込んだ一冊なのだという。
表紙には、「あらゆる領収書は経費で落とせる」という副題がついている。その言葉通り、さまざまな領収書が理由さえつけることができれば経費で落とせる。なんと、温泉旅行ですら経費で落とせるのだという。
経費で落とすことは言うまでもなく節税になる。そして、それ以外にもいくつもの節税の方法がこの本には書かれていた。
この本は二作目であるらしい。前作は、サラリーマン向けの節税の方法を解説していたという。そして、今作は、フリーランサーや個人事業者のための本だ。
本を読んでいて、何より驚いたこと。それは、「税務署にノルマがある」のだということだ。彼らは、税金の追徴課税を回収していくことを目的に仕事をしている。
かつて、ノルマを達成するために、会社に何の過失がなかったにもかかわらず、過失があったことにして税金を追加でとったことで問題になった事件があったのだという。
私たちからすれば、税務署は決して逆らってはいけないものだという印象だった。いわゆる、警察と同じ。国家公務員の代表で、アヤシイことをしている企業を調査するためにあるのだ、と。
けれど、そうではないという。税務署は正義の味方というわけじゃない。彼らは税金の知識を自分たちの節税のために駆使し、他のところからは出来る限り多く税金をとる。税務署とは、そういった組織なのだ。
だからこそ、税務署員の節税を学ぶことが、より有用になってくる。脱税は犯罪になるけれど、節税は違う。私たちは、税金に対して文句を言うのではなく、節税の方法を学ぶことに力を注ぐべきなのだろう。
後日、社長は税金を学ぶ決意をしたという。なんでも、来訪した税務署員に口座の中身までチェックされ、たっぷり追加の税金を払うことになったらしい。
税金は国民の義務といわれている。だというのに、それはあまりにも不透明だ。私たちには税金がどのように使われているのか知る術はなく、誰もが税務署を嫌い、税金を「とられる」として厭う。
それでいいのだろうか、と思うのだ。それは、税金とは本来、社会を良くするために使うものだ。そのために、私たちは税金を支払っている。だから、税金は最終的に私たち自身の利につながってくるのだ。
だというのに、税金にはすっかり不信と嫌悪が根付いてしまった。それは、私たち自身が持つ拝金主義思想からくる嫌悪でもあるし、数々の不祥事によって税金の使われどころへの信頼がなくなったせいだ。
国としても、個人としても、企業としても。税金の在り方を、今一度考えてみるべきなのかもしれない。まずは、私自身が税金を学ぶところから、始めてみよう。そう思った。
税務署とは
個人事業者、フリーランサーの方は、経理や税金に関して経験が少ないことが多いものです。特に事業を始めたばかりの人、独立したばかりの人は、経理や税金に、ちんぷんかんぷんという方も多いかと思われます。
また確定申告について、本当に実践的な情報はあまり流れていません。たとえば、世間では「確定申告は青色が有利」ということがよくいわれます。しかし、フリーランサーなどは、最初は白色申告をしていた方が、得になることも多々あるのです。
本書では、そういう実践的な情報もずっしりと詰め込んでいきたいと思っています。そして、今回はサラリーマンにも役立つ情報をたくさん載せております。
サラリーマンの方は、税金に関して諦めきっている感がありますが、決して諦めなければならないものではありません。サラリーマンでも、節税のやり方はけっこうあるのです。
たとえば、「温泉に行って税金が安くなる方法」があるのはご存知ですか? そういう”誰でも知っていれば役に立つ方法”をご紹介しております。
本書を手に取ってもらえれば、どんな方でもなんらかの節税のお役に立てるものと自負しております。
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