投資はギャンブルだと、若い頃の僕は思っていた。仕事で挫折した後の僕は、お金を稼ぐためのツールとして投資は有用だと思っていた。今の僕は、そのどちらとも違う考え方をしている。
若い頃のことを思い出す。僕はずっと親譲りの堅実な安定志向で、決して冒険をしない性格だった。ギャンブルなんてしたこともないし、そのひとつだと信じていた投資にも当然手を出さなかった。
しかし、仕事で精神を病み、退職して帰ってからの僕は、しばらく貧乏な時期を過ごしていた。先入観を捨てて、投資はギャンブルではなく、お金を稼ぐためのツールとして見始めたのはその頃だ。
ハイリスクハイリターンの投資はギャンブルに近い。しかし、むやみに欲を出すのではなく、小さいながらも積み重ねていけば、投資はギャンブルではなくただのゲームじみたツールになるのだと考えた。
そうして始めたFXでは、しかし縦横無尽なチャートの変化に翻弄されて3万円を吐き出す結果となってしまった。FXはどうやら向いていないと断じて手を引くことにした。
それ以降は、いちいち値幅を自分で気に掛けなくともよい投資信託や、少額ずつを使っている株式投資をちまちまと進めていた。少しずつではあるが、残金は増えつつあった。
しかし、どうにも満たされない。少なくとも貧乏だった一時期よりはお金がある。それなのに、どうしてだろうか。お金が貯まっていくにつれて、僕の心は空虚になっていくかのようだった。
当時のことを思えばぞっとする。思えば、貧乏な時期よりも苦しい時期だった。一冊の本と出会ったからこそ、今の僕がある。
それは、『くそつまらない未来を変えられるかもしれない投資の話』という、バンドマンが書いた本だった。
今まで投資の本は何冊か読んだ。どれも、「この方法がいい」「この方法でなくてはいけない」や、「投資をしてお金持ちになろう」のような内容ばかりで、うんざりしていた。
けれど、この本は、投資のいい方法を押し付けようとはしていない。それどころか、投資をお金稼ぎのツールとすら認めていない。この本を読むことで、私は「投資」の本質を見誤っていることを知った。
投資とは、そもそも何か。多くの人は金を稼ぐためのツールや手段として見ている。しかし、投資は、本来そういうものではなかった。
「投資」とは、読んで字のごとく、「資産を投じる」ものである。つまり、真逆なのだ。金を稼ぐのではなく、金を払うことこそが、投資の真実だ。
成長してほしいもの、応援したいものに、自分の資産を分け与えて、「がんばれ!」と声をかける。それこそが、本当の意味での投資だった。
それが逆にどうしてお金が増えるのかというと、応援した相手が「あなたのおかげでこんなに大きくなったよ!」というお礼をしてくれているに過ぎない。
お金を稼ぐ目的で投資をしている私たちは、言うなれば、「相手からのお礼を目当てにプレゼントを与えている」ということである。こんなに恩着せがましいことがあるだろうか。
より稼げるようにすることでお金を集める。そうした狡い企業が多く投資され、社会を牛耳っていく。今の社会は、金を中心に見据える彼らが創り上げてきた「くそつまらない世界」だ。
じゃあ、それを変えるには、どうするか。簡単なことだ。本当に応援したい企業に、投資をする。投資を本来の意味として捉え直して、心から応援する。
本当に好きだと思った企業が、社会で活躍できるように。その行動が、このくそつまらない未来を変えてくれるかもしれない。
僕は投資のスタイルを変えた。本当に好きな企業に投資するように。結果的に利益は出たが、正直どちらでもよかった。
好きなものを応援することができる。そのためのお金ならば、たとえなくなっても惜しくはない。僕の未来は、ようやく少しだけ明るくなった。ような気がする。
投資の本当の意味
日本中どこに行っても四角くて色のないマンションが並んでいるし、同じようなショッピングモールやコンビニばかりが増えていて、家も店も商品も売れるように最適化された物ばかり並んでいる。
悔しいけど、この街を作ったのは俺たち自身だ。目の前に出された物ばかりを手にして暮らしていたらこれから先も何も変わらない。未来はくそつまらない方向へ進み続けることになる。
自分たちが笑って生活していくために、お金をどのように使い、どこに預けるのか、すべて自分の意志で選び取っていきたい。
そのためにも、投資は一部のギャンブラーやお金持ちがやる特別な遊びとしておくべきじゃないと考えている。
この本『くそつまらない未来を変えられるかもしれない投資の話』はタイトル通り、投資や経済、社会とお金に関することを書いていくわけだけど、いちパンクスである自分からの視点で展開されていく。
これは今自分がいる場所から見える社会問題や将来の不安と戦いながら楽しく生きていくための冒険の書で、まったく専門的なものではない。また、投資について語るからといって、稼ぎの量も重視しない。
重要なのは量より質で、「よい暮らしをする能力や環境があるかどうか」よりも「今よい暮らしをしているかどうか」のほうを重視して生きていきたい。
この本の中では「投資」をお金を増やすための道具ではなく、人生を楽しむための道具として扱ってみたい。投資を生活の中に落とし込むことで、よりよく、より楽しく生きていけるのではないか、という提案だ。
今俺たちの目の前にはうっすらとくそつまらない未来が浮かんで見えるけど、くそ笑える未来もまったく見えないわけじゃない。
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