「センスがないよね」
彼にそう言われたことは僕の心に深く刻まれた。傷ついていたわけじゃない。ただ、「なるほど、僕はセンスがないのか」と納得した。
その記憶が今になって蘇ったのは、石渡晃一先生の『今日からセンスを君の武器にしよう』という本を見つけたからだった。
「センスがない」というのはたまに聞く言葉だけれど、当時の僕は、傷付くよりも先に疑問の方が先んじた。おかげであまり精神的なショックを受けなかったとも言えるけれど。
センスって、そもそも何だろう。それは、当時から僕が内心で抱いている疑問だった。それを言ってきた彼に教えてほしいくらい。
思えば、「センス」という言葉を僕は何気なく知っているし、使っているのかもしれないけれど、具体的にそれが何なのか、説明しろと言われたら言葉に詰まる気がする。
そんな疑問も手伝って、その石渡先生の本を物は試しと読んでみることにした。これを読めば、センスというものが何者か、そして、それを磨くにはどうすればいいのか、わかるかもしれない。
読んでみてわかったのは、まず、スキルとセンスは違うものだということだ。スキルは短期間で育てることができ、すぐに役に立つ能力や技術だ。評価がわかりやすいから、多くの人がスキルを好んで学ぶ。
けれど、実はそれは罠だという。スキルだけでは必ず行き詰まる。その壁を超えるにはセンスがどうしても必要になってくるのだ。
だが、センスはスキルとは違い、長い時間をかけてお金と労力を支払って育てないといけない。だから一見大事に思われない。人生において生きるのは、本当はセンスの方だっていうのに。
この本には、センスを育てる方法がいくつかの章に分けられて書かれている。「情報を集める」「選ぶ力を磨く」「うまく伝える」の三部構成。そのどれもが、テーマに沿ったビジネスに役に立つ内容をしていた。
センスはスキルのような訓練ではなく、日常の中で育てるものである。だから、その人自身の生き方や考え方が直結することになる。
まずひとつ、大切なのは、センスを育てるには環境も重要だということだ。自分がともに過ごす人物。センスがいい人たちの中にいると、自然と自分自身のセンスも磨かれていく。
センスがいいと思う相手の行動を観察して自分のものにし、そしてまた、相手からもらうと同時に自分からも相手に与えるものがなければならない。
そして、もうひとつは本。読書は効率よくセンスを高めることができるのだという。そこには作者が長い時間をかけて培った考え方があり、それは読むことで自分自身のものとすることができる。
僕が今まさに読んだこの本、『今日からセンスを君の武器にしよう』も、そんな本のひとつだ。センスを磨く手段として、ひとつの武器になる。
読み終わって、僕は本を閉じた。なるほど、センスか。友人から言われた「センスがない」という言葉の重み。センスの有用性を知った今となっては、その重みをはっきりと感じ取れるようになっていた。
磨かなければ。強くそう思う。仕事だけじゃない、センスは人生そのものに作用してくるものなのだ。そして、磨くのに時間がかかるのなら、意識して早めに磨き始めなければならない。
センスがいい。彼にそんなふうに言われること。ひとまずは、そんなところを目指してみようかな。僕はそう心に誓った。
センスの磨き方
スキルや知識を身につけ、がむしゃらに仕事をすることはとても意味のあることだ。でも、それだけでは超えられない壁が必ずやってくる。
まさにそのときに、自分のなかに蓄積しておいたセンスが役に立つ。いま、このセンスの重要さに気付けば、もうセンスを身につけたようなもの。なぜなら、センスは日々の仕事や生活を通して、誰でも磨くことができるから。
もっと仕事を楽しくしたい、充実させたい、という人は、ぜひこの本に書かれていることを実践してみてほしい。特に、自分の能力を100%発揮できずに伸び悩んでいる人にこそ読み進めてほしいと思っている。
スキルには教科書やマニュアルがあり、それに沿って根気よく学べば必ず手に入れられる。そこで身につけた能力や技術は、目に見えるものだし、評価しやすい。そしてそれこそが、スキルの罠だ。
あなたの人生をおもしろおかしくしてくれるもの、夢を実現するためにあなたの武器になってくれるものこそが、センスの正体だ。
ただ、センスを磨くには、長い時間とお金と労力が必要。自分で気づき、経験し、感じる中でしか磨かれない。だけど、その時間とお金を驚くほど短縮できる方法がある。
その方法をこの本の中であますところなく披露しようと思う。センスとは、好きなことを仕事にするセンスであり、気持ちを伝えるセンスであり、悔いのない人生を過ごすセンスだ。
このセンスの正体とは、いったい何で、どういうことをすれば磨けるのか。それを具体的に皆さんに伝えていきたいと思う。
この本は、人があまり気付いていないセンスのパワーを、特に若いビジネスパーソンが身につけ、武器とするためのエッセンスがぎゅっとつまっている。
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