少し前、コロナの情報でいっぱいだったニュース番組は今、別の話題で盛り上がっている。ロシアとウクライナの戦争。プーチンはいったい何を思って、この戦争を起こしたのだろうか。
思い出すのは、最近読んだ本。『「わがまま」のすすめ』というタイトルの作品だ。もともとは経済企画庁の長官だったという堺屋先生が書いている。
「自分が本当にしたいことをみんながすれば、世の中はいい方向にころがる」という持論のもと、高齢者に対して「もっと好きなように生きろ」と述べていた。
プーチンについて調べてみて驚いたことがある。彼がロシアの首相になったのは2000年頃。間に抜けていた時こそあれど、かなり長い期間ロシアの最高権力者として君臨してきた。
スマートな印象があった顔立ちも、「あれ、こんなに老けていたっけ」と思ってしまうほど年齢による衰えがありありと表れている。
彼もいわゆる高齢者と呼ばれる年齢である。今もなお権力を保持し続けている彼が、いったいどうして突然ウクライナへの侵攻を決断したのだろうか。
ニュースでの情報を過信しすぎるのは危険だ。だけど、日本やウクライナだけでなく、アメリカ、さらにはロシア国内にすらも、今回の戦争に反発しているような声が多いように思う。
ロシアに対する経済政策は強められるばかり。さらにはプーチン自身にすらも。それなのに、彼は戦争から手を引こうとはしない。いったい何が彼をここまで突き動かしているのか。
『「わがまま」のすすめ』では、高齢者に好きなことをすることを推奨するとともに、もうひとつ、社会的な視点を論じている。
それは、日本の平成官僚の功罪について。経済を崩壊させ、かつての輝かしい日本の過去に囚われたまま、時代に対応した変化を受け入れることができないでいる。
著者もまた元々政治に携わる人間だったからこその視点だろうか。強烈な平成官僚批判は、高齢者への自由を推奨した温かな口ぶりもなく、苛烈だった。
日本の政治家は、変わることができない。いや、そもそも変わる気がないのだろう。失言を繰り返している政治家がずっと政治の中枢に居座っている。罪を犯してもスキャンダルがあっても口先だけの謝罪をして辞めない人たちがあまりにも多い。
そんな彼らにとって、コロナウイルスの流行、そして今回のロシアとウクライナの戦争は、衝撃だったのではないだろうか。
コロナウイルスの流行は社会を大きく塗り替えた。ロシアの突然の侵攻は、国際社会全体を塗り替えるようなことになるかもしれない。
もちろん、それは決して良いことではないだろう。コロナ禍には多くの人が仕事を失ったし、それは今も続いている。侵攻を受けているウクライナはもちろん、経済制裁を受けているロシア国民も苦しむ結果となっている。
けれど、これらの苦難に満ちた出来事はむしろ、変わるチャンスであるようにも思うのだ。
平成になって以来、日本の経済は傾き続けている。昭和の頃のような熱狂は、すでに人々の中にはなくなってしまった。
社会全体に立ち込めるような閉塞感。それは平和な世の中で、「変わらないこと」にしがみついてきた結果のものだと思う。
今、私たちは変わらなければならない状況に陥った。悪い方ではなく良い方に変わるためにはどうすればいいか。そのことを、ひとりひとりが考えなければいけなくなったのだろう。
しあわせに生きるために
人間は強大な生き物だ。自然を克服し、資源を開発し、地球上のあらゆる環境の中に生息する。人間以外の生物の多くは、人間の意志によって生まされ、飼い育てられ、そして殺される。
だが、その一方で人間は、強大な仲間と共同で生きるために、常に自分の欲望を抑え、意志を曲げねばならない悲しい存在でもある。
人間は生まれ落ちたその時から、自分が本当にしたいことから目をそむけ、周囲の期待に応えるように教えられるのである、そんな状況が長く続くと、自分のしたいことを追求する気も失せ、なおそのことに気付かない。
古来、幾多の聖人賢者が人間の生き方と世間のあり方を説いたが、その多くは自己の欲求を抑えて集団に尽くす道であった。要するに、有利に生きる道であって、真の幸福に至る道ではない。
しかし、人間がみな、己を虚しくして組織と周囲に尽くすことが、世のため組織のために有益だろうか。
人間は、有利に生きようとして自分の好みを抑えることに慣れてしまった。だが、それは、日本人の多くを幸せにしたとは言い切れない。
人間がわがままに生きることは、本当に欲しいものを要求すること、つまり真実の需要を生み出すことだ。もしそれを満たす供給が可能となれば、本当に幸せな、各人が本当に欲しいものを手に入れる世の中が出現するはずである。
「有利さ」は人間を幸せにするとは限らない。より多くの物財を得、権力と部下を得ることになっても、満足と快適さが得られるとは限らないのだ。
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