演劇の世界を裏側から描く『シアター!』有川浩
変身願望、というものがある。自分ではない他人になってみたいというものだ。
入館ありがとうございます。ごゆるりとお寛ぎくださいまし。
変身願望、というものがある。自分ではない他人になってみたいというものだ。
ビートルズの『ノルウェイの森』が誰もいない部屋に流れている。私は広すぎるソファに寝転んで、ぼんやりとそれを聞いていた。
あれは、いつのことだったろうか。私は失くしてしまった思い出を手繰り寄せる。
「偶然は人を無防備にする、っていう定説があってね」
祖父が亡くなったときのことを今でも覚えている。母方の祖父は私の覚えのある頃にはもういなくて、私の知っている祖父はひとりだけだった。
「さて、それでは計画を詰めていこうか」
ああ、わからない、わからない、わからない。散々頭を悩ませた挙句に、私は数日も徹夜して書いた文章を削除した。
まこと本というものは面白い。私は常々、そういったことを感じてやまないのである。
ああ、四次元ポケットが欲しいなあ。私は思わずテレビの中で動いている青い猫型ロボットを眺めながら呟いた。
彼は幼い頃、ひどく貧乏だった。がりがりに痩せていて、汚れた半袖からは骨のように細い手が伸びていた。