届けられた請求書を見て、俺は目が飛び出るかと思った。二度見してみても桁が減ることはない。マジか。小さく呟いてみる。俺の呟きは、虚しく響いて溶けるように消えた。
「え、お前、まだキャッシュレスにしてねぇの?」
そもそもの始まりは、先輩の言葉だった。キャッシュレスって何すか? 俺の質問に、尊敬する先輩は快く答えてくれる。
「キャッシュレスってのは、クレジットカードやスマホの決済を使って金を払うことだよ。現金持ち歩かなくていいから便利だぜ」
ほら、見ろよ、俺の財布。そう言って見せてくれた彼の財布には、なるほど、お札なんて一枚も入っていない。僅かばかりの小銭と彼女の写真が入っているだけだった。
「小銭は自動販売機でジュース買う時のために残してるけどな、お札なんてもう時代遅れよ」
「すげぇっすね」
「お前もやってみろよ、キャッシュレス。ほら、現金を直接手でやりとりしなくていいから、コロナの感染防止にも役立つんだぜ」
散々飲み食いした後のそのお店の支払いは、先輩が奢ってくれた。もちろん、例のキャッシュレス決済とやらで。でも、レジ前で現金をごそごそ探すような真似はしない。スマホを見せて、ピッとするだけ。そのスマートな姿に憧れ、俺もキャッシュレスにすることに決めた。
始めてみて、俺はその簡単さに驚いた。スマホをかざすだけでいい。計算もお釣りのやりとりも、何もしなくていい。こんなに便利なものがあるなら、もっと早く始めていればよかった。
スマホをかざして支払うその感覚が次第に気持ちよくなって、俺は買い物をしまくった。今になって、遅れてきた現実が押し掛けてくる。いつの間にこんな額のものを買ってたんだ、俺は。
「お前、馬鹿じゃねぇの。キャッシュレスだってお金なんだから減るのは当たり前じゃねぇか」
先輩に相談すると、開口一番で厳しいひと言をもらった。何も言い返せない。たしかに、現金を支払わないからこそ、お金を払っているという感覚がなくて、使いすぎてしまった感じはある。先輩はため息を吐いて、一冊の本を差し出してきた。
「ほらよ、これ。お前はまずキャッシュレス始める前にこれ読んで勉強しろ」
先輩が渡してきたのは、『キャッシュレス貧乏にならないお金の整理術』という本だった。
「何すか、これ」
「キャッシュレス決済を上手く使いつつ、お金を管理していくやり方が書かれている本だ。読んでみたけど、わかりやすかったぜ。俺も今、その本を参考にしているのさ」
新しい技術の便利さに浮かれてはしゃぐ前に、まずはそれについてよく知らねぇと話にならないからな。気をつけろよ。先輩はそう言って支払いを済ませて帰っていった。
俺は本のページをめくる。俺に届けられたトンデモナイ額の請求書。もう二度と同じ轍を踏まないため、俺はその本を、目を皿にして読み耽った。
キャッシュレスの気をつけること
あなたは「現金派」ですか? それとも「キャッシュレス決済派」ですか?
今や多くの人がキャッシュレス決済を利用する時代です。ポイントもつくし、簡単だし……便利でお得なキャッシュレス決済は今後ますます広がっていくでしょう。
しかし、その陰で”ある問題”が起きています。それは、”隠れ赤字”の人が増えている、という問題。毎月の家計が赤字になっていることに気付かない人がたくさんいるのです。なぜでしょうか?
原因は、お金を支払う方法が増えたことによる”混乱にあります。「現金」「電子マネー」「クレジット」……。今、支払いの方法が多様化しているため、お金を管理するのが難しくなっています。
現金だけなら、財布に入っている量でその増減をつかめますが、そこにキャッシュレスという”見えないお金”が加わったことで、いったい全部でいくらお金を使ったのか、わかりにくくなっているのです。
しかもキャッシュレスは、現金より使いやすい感覚があると思います。本来はスマホやカードに入っているお金も、「現金」と同じ大切なお金ですが、まだ使う人の感覚がそれに追いついていません。
これまでのお金=現金という感覚から、お金=数字という認識に変えていかなくては、安易に使いすぎてしまうことは避けられないでしょう。
”隠れ赤字”の問題は、今後ますます深刻になっていくでしょう。このままでは、”キャッシュレス貧乏”へ、まっしぐらです。貯金どころではないでしょう。
本書は、この”キャッシュレス貧乏”という問題を解決していきます。解決のために必要なのは、支払いを「視える化」することです。いつ、何に、どれくらい、支払ったか。しっかり把握することが必要です。
今回は、「現金」「電子マネー」「クレジットカード」の3つの支払い方法に分けた記録法を提案します。本書は、それをはじめて体系化したのでぜひ使ってみてください。
そして、もうひとつ、あなたの「財布」をお金が貯まるものに変えることを提案します。大きい財布は、ものがたくさん入る分、余計なものが溜まりやすいのが欠点です。いくら使ったのかもよくわからず、「視える化」できていないのが問題です。
その点。小さい財布は必要最小限のものしか入らないので、整理しやすく、お金の出入りがよく見えます。キャッシュレスの時代、財布は小さくても困ることはないはずです。
「財布の小型化」と「キャッシュレス対応の家計簿」の2つによって、支出の”穴”を埋めて、お金が貯まる”流れ”をつくっていきます。すると、ムダなお金がみるみる減って、貯金の額は驚くほど増えていくはずです。
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