働きながらリスクゼロで小さく稼ぐ『好きなことで起業する』新井一


ほんの数年前まで、俺は今の自分を想像すらしていなかった。会社員とは思えないほどの、自由で楽しい生活。あの頃は、そんなもの、自分には縁遠いものだと思っていたのに。

 

数年前、俺はしがない一介の会社員だった。起きて、会社に行って、働いて、帰って寝る。俺の生活はそれだけだった。

 

恋人がいなければ、友人がいるわけでもない。灰色の人生。楽しさも何もなかった。自分が生きていることに疑問を持つことが怖くて、ただ心をなくして働いていた。

 

俺は何をしたいのか。何のために働いているのか。それすらも、もはやわからなくなっていた。そんな時、ふと本屋の店頭で、一冊の本が目に入った。

 

『好きなことで起業する』。なんとまあ、変わり映えのしないよくあるビジネス書のタイトルだが、どういうわけか、それを目にした時、俺の脳裏にふっとフラッシュバックするものがあった。

 

それは過去の記憶。俺は昔、父の背中を見るのが好きだった。父は職人で、木工細工をしていた。幼い俺は、父の真似をして、よく並んで木材をいじっていた。

 

父と最後に和やかな会話をしたのは、いつだったろうか。学生の頃、父と折り合いが悪くなり、反抗した。それ以来、未だに父との関係は不安定なままだ。

 

ああ、そうだ。俺はもともと、自分の手で何かを作ることが好きだった。学生になり、友だちと付き合うようになると、毎日のように出かけて、木工なんかからは離れてしまっていた。

 

だけど、今、俺の胸中には強い衝動があった。何かを作りたい。それは、すでに凍り付いた俺の心の中で熱い火を燃やしていた。

 

俺はその本を手に取る。起業。果たして、そんなことが本当に可能なのか。俺は自分にそんなことができるとは少しも思わないし、何ができるわけでもない。

 

仕事。生きていくためには、金が必要だ。金を稼ぐには、働かなければならない。だが、好きなことを仕事にするというのは、なかなかに難しい。世の中の幾人が、それを果たせているだろうか。

 

起業は、自ら仕事をつくる、ということだ。嫌いなことをするために起業する人はいないだろう。起業は、当然、ある程度好きなものを取り扱うに決まっている。

 

ものをつくる会社。それを作ろう。躊躇なく浮かんだその考えに、俺は戸惑った。その渇望は、行動しないと落ち着きそうにもなかった。

 

好きなことを仕事にする。それは、考えてみると、少しだけ罪悪感もある。そんなことをしていいのか、と。

 

好きなことをして、お金も稼ぐことができる。そんなに虫のいい話があるわけない。未だに俺の心はそう言う。

 

俺にとって仕事は、ただただ嫌な時間でしかなかった。生きるために渋々しなければならないだけの時間だ。俺は生きるために、多くの人生を自分の嫌いなものに注ぎ込んでいる。

 

だが、起業すれば、そんな生活からも離れることができる、かもしれない、という。その本は、俺の中の猜疑心など見飽きたかのように語りかけてくる。

 

重要なのは、起業するからといって、仕事をやめろ、とは書かれていないことだ。むしろ、仕事を続けながら起業するべきである、と、この本には書かれている。

 

金。スキル。経験。仕事から得られる価値あるものは、意外と多い。そして、金の余裕があることは、予想するよりも安心感ができ、余裕が生まれる。

 

起業に費やす時間は、ほんのわずか。それでも、水をあげ続けていけば、何もないところからも大樹が育つことだってあるのだ。俺はそのことを、身を以て知った。

 

 

好きなことをして、お金を稼ぐ

 

起業というと、なんとなく「自分にはとうてい無理だ」と思い込んでしまう人が多いのですが、難しく考える必要は全くありません。

 

「好きなこと」「強み」がビジネスになっていくものなのです。起業をするのに性格の向き不向きも特にありません。よく言われるような起業家スピリットも必要ありません。

 

「好きなこと」を持ってさえいれば、すべての人に起業のチャンスがあります。あなたが今会社員なら、起業と会社をはかりにかける必要もありません。会社員を続けながら、起業への第一歩を踏み出してください。

 

私のオススメする起業は「好きなことをやれるから楽しい」上に、ちゃんとお金も稼げるビジネスです。これこそが現代の会社員の方が抱える悩みを一気に解決できる方法だと信じています。

 

「好きなこと」から始める起業は、すべての人が実行可能なものです。始めるための動機は、「自分が楽しいから」という理由だけで十分です。

 

もちろん、最初の一歩を踏み出した後は、予定通りにいかないことだらけでしょうし、会社の看板を持たない自分の無力さを味わうこともあると思います。

 

でも、きっとやがてはあなたにも顧客や社会全体の幸せを願えるようになるでしょう。そしてそれゆえに、さらにあなた自身ももっと幸せになれるはずです。そんな日が来ることを心から願っています。

 

 

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