毒に満ちた最後の少女小説『聖少女』倉橋由美子
彼は私の頭を優しく撫でてくれました。私は幼い頃から彼のことが大好きで、愛していました。けれど、どうやらそれはイケナイことらしいのです。どう...
入館ありがとうございます。ごゆるりとお寛ぎくださいまし。
彼は私の頭を優しく撫でてくれました。私は幼い頃から彼のことが大好きで、愛していました。けれど、どうやらそれはイケナイことらしいのです。どう...
「その気になればね、砂漠に雪を降らすことだって、余裕でできるんですよ」その言葉を読んだ時、私の心のどこかが震えたような気がした。
もしも、ひとりの人間を「悪」として育てようとしたのなら、その人間はどんな人間になるのだろうか。「悪」の英才教育を受けた人間は、どんな人生を...
白い病室は、さながら牢獄のようでした。窓の外に見える光景はこんなにも近いのに、あまりにも遠い。兄以外に見舞いに来るような知り合いもおらず、...
「思ふこと言はでぞただに止みぬべき我とひとしき人しなければ」 思っていることは言わずに、そのまま終えるべきであろう。私と同じ人などこの...
妻が別の男と家を出たのは、つい数時間前のことである。妻の不倫を知った俺が追い出したのだ。空っぽになった部屋を、俺はぼんやりと眺めていた。
耳を澄ませてみれば、軽やかな音色が跳ねるように聞こえてくる。モーツァルトの『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』。その音楽に浸りながら、伊坂...
『あさきゆめみし』という漫画に惚れこんで以来、はるか昔にかの紫式部が書いた『源氏物語』という作品を、私は長らく読んでみたいと渇望しておりま...
私はきっと地獄に落ちるのでしょう。手を合わせて祈りながらも、胸の内では、神の存在を疑っているのだから。神は本当にいるのか。罪悪の甘美に浸り...
僕はコーシローのことが羨ましかった。ハチコウのように名が残ったわけではない。タロとジロのような苛烈な生き様を送ったわけでもない。だが、もっ...