これからの時代を生き抜くために『大変な時代』堺屋太一
昔は良かった。まるで老人のような感傷を、私もまた、抱くことになるとは思っていなかった。
入館ありがとうございます。ごゆるりとお寛ぎくださいまし。
昔は良かった。まるで老人のような感傷を、私もまた、抱くことになるとは思っていなかった。
「ほらほら、楽しいなあ。なあ、お前も楽しいだろ? 楽しいって言えよ!」
僕は思わずぞっとした。周りの彼らが僕に向ける、異常な視線に。まるで異邦人のようだ。こめかみを、一筋の汗が流れる。
「なんで! どうして私がクビなんですか!」
この世界はシステムでできている。私たちはその世界を回す歯車のひとつとして、ただ無心に仕事だけをこなしていればいい。
二人の男女が向かい合って座っている。カップルだろうか。楽しげな表情だ。しかし、彼らの間に会話はない。彼らは互いにスマホの画面だけを見てい...
スーパーに並んでいる肉を、私は見下ろした。ふと、思う。よく考えてみれば、私はこの『肉』というものの正体を、何も知らないのだ。
先がない。どうしたものだろうか。私は頭を掻きむしる。日焼けした皮膚が、堪えがたい痒みを訴えていた。それは、身体の奥底からくるような、焦り...
カビの生えたパンを齧る。腹が空腹を訴えた。黙れ、今月はこれで最後だ。俺はそう言って腹を殴る。痛い。痛い。誰のせいだ。
世の中はなんて生きづらいのだろう。「らしさ」を求められて、「自分」を出したら見放される。それなのに、「個性」を大切にだとか、偉そうなこと...