退職を悩んでいる人必見『魂の退社』稲垣えみ子
会社を辞めたあの日、最後の出勤日を終えて外に出た時、私は今後への不安と開放感を感じたことを思い出す。
入館ありがとうございます。ごゆるりとお寛ぎくださいまし。
会社を辞めたあの日、最後の出勤日を終えて外に出た時、私は今後への不安と開放感を感じたことを思い出す。
それは熱狂だった。まさしく、文字通りの。それは大きなうねりとなって、国ひとつを巨大な怪物のように呑み込んだかのように見えた。
人と話し合うのは苦手だった。議論になりそうになると、どうしても逃げてしまう。私はいつもそう。
自分の鼓動が大きく聞こえる。ぞっとするほど寒く、それなのに汗ばんでいる。いやだ。この先を見たくない。そう思うのに、私の目は文字を追いかけ...
毎日のように、ニュースでは悲惨な事故や事件が報道されている。そんな国に、今、私は生きているのだ。
世界はより悪い方へと向かっている。私はそう信じていた。それが間違っていると教えてくれたのは、一冊の本であった。
大人は子どもを良い方へと導こうとする。けれど、子どもは意外と賢くて、大人が思っているよりもずっと、いろんなことをわかっている。
ようするに、誰でもよかったのだ。それが真実かどうかは関係がない。真実でなくても、選ばれた時点で、それを世間が真実にするのだから。
僕たちはテレビに絶対の信用を置いている。テレビが言うことに間違いはないと盲信している。けれど、テレビは本当に信じられるようなものなのだろ...
「お前、オズワルドになる気はないか?」