スマホを手に、私は固まっていた。うーん、と考えて、指が少し動いては、また文字を消す。さっきから、その繰り返し。
SNSを始めてみたのは、つい最近のことだった。友達がみんなやっているものだから、やりたくなって、始めてみたのだ。
けれど、始めてみたら、これが思っていたよりも難しい。どうすればいいのか、さっぱりわからなかった。
始めたからには、何かしら呟いてみたい。そうじゃないと始めた意味がない。そうは思っていても、何を呟けばいいのかわからない。
それが、今こうしてうんうん唸りながら、呟きを考え込んでいる、というわけだ。
以前にも呟いてみたけれど、我ながらどうにもぱっとしない。というか、はっきり言って真面目くさっていて、何の面白みのない呟きになってしまった。
せっかくなら、何かいい感じの呟きがしたいな。でも、それが難しい。どうしてみんな、簡単そうにそんなに呟くことができるのだろう。
はあ、ちょっと考え直そう。そう思って、スマホを放り出して、ベッドに寝転がる。すると、ふと、本棚に収まった一冊の本が目に入った。
竹田圭吾という人の、『コメントする力』という本だった。思わず手に取ってみる。
呟きはある意味、コメントと呼べなくもない。もしや、この本は今の私にとって必要な本なのでは。そう思って、ページを開いてみる。
その本によると、コメントとは、「コメント力」の他にもうひとつ、前提となる「情報力」によるものなのだという。
スマホだけでなく、ニュースサイト、新聞、テレビなど、今の世の中にはさまざまなメディアがあり、情報に溢れている。
その中から情報を自分の頭の中に覚えさせておき、必要な時に、それを引き出す。
コメントをするには、情報が必ず必要になる。だからこそ、前提となる情報なくしてコメントはできない。
なるほど、どうやら、私は何もわかっていなかったらしい。「呟く」ということを、甘く見ていた。
だけど、だからこそ、ちょっと頑張ってみようかなと思った。指をスライドさせながら、本の内容を思い出す。
他の人と同じことを言わず、常に客観的な視点を持つ。そのことが、頭の中に残っていた。
みんなが呟いている内容。今までは疑問に思わなかったそれが、少し考えてみると、首を傾げるようなことを言っている時もある。
情報を探して、発信する。自分から情報を発信することは、ネット上に自分の存在を確立することにつながる。
そして、ネットを通してコメント力を鍛えることは、必ず現実の世界でも役に立てることができるという確信があった。
今は、いろんなところでコメントをすることが求められる。そんな時に、私はいつも無難なコメントでお茶を濁すのが関の山だった。
でも、これからは。この呟きと同じように、目を引くようなコメントがしたいな。私はそう思いながら、少し考えて、文字を打ち込む。
コメント力と情報力
「テレビのコメンテーターって、思いつきで喋ってるんでしょう?」
そんな問いかけを受けることがあります。イラッときます。質問の意味によって、答えはイエスでもあり、ノーでもあり、ひと言では答えようがないからです。
思いつきで喋る。それが、その場で頭に浮かんだことを咄嗟に言葉に変換して発している、という意味であれば、答えはイエスです。
思いついたら喋る。あるいは、思いつきながら喋る。ときには、思いつく前に喋る。それがコメンテーターに求められている技術であるということはできます。
そうではなく、自分が感じたことを気ままに、テキトーに語っているのだろう。そんな意味で「思いつきで喋る」と尋ねているのであれば、答えはノーです。
思いつきで喋るという行為の前には、何かを思いつくというプロセスが存在します。何かを思いつくには、そのための材料が必要です。
コメントは、準備してストックした材料の中から必要なものをピックアップして、瞬時に加工して視聴者に差し出す行為です。そうした段階の中で、私が常に意識していることは次のようなものです。
・情報は整理しない。
・情報は全体像でみる。
・情報はタテ軸とヨコ軸に聞いてみる。
・情報はズームイン/ズームアウトして観察する。
・すべてはグレーと考える。
・わからないことを受け入れる。
・情報は収集しない。
・情報はストーリーで発信する。
・他人と同じことは絶対に言わない。
・刺さるコメントよりも、しみ込むコメントを。
・いつでもどこでも聞き手を意識する。
・ツイッターを使い倒す。
・ボケる力を磨く。
この本では、これらのことについて詳しく書いてみたいと思います。
要するに、コメント力と、そのための情報力。これらについて、何がポイントで、どうすればそれが身につくかをまとめました。少しでもお役に立てばうれしいです。
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