読み方を変えれば世界が変わる『読書をプロデュース』角田陽一郎


私の友達には読書家がいる。彼女はいつも本を読んでいた。私は彼女が好きだけれど、それだけがどこか気に入らない。いったい、本の何が面白いというのだろう。

 

学校の読書週間とか、読書感想文とかってあるじゃん? あれが昔からすごく嫌だった。読書が嫌いなのに、あの時間だけは、無理やりにでも本を読ませられる。拷問みたいだ。

 

一度だけ、それならと思って兄貴のマンガを拝借して読もうと取り出したら、先生からえらく怒られた。「マンガはダメ」って。それってどうなの。マンガだって本じゃん。

 

マンガならまだまし。動かないけれど、字は少ないし、ちゃんと絵があるから。いやでも、やっぱりアニメや動画でいいな。動くし。声があるし。

 

「ねえ、本なんて読んでおもしろいの?」

 

「おもしろいよ」

 

「……ふぅん」

 

読書家の彼女に聞くと、いつもこの答えが返ってくる。彼女が読む本は毎回違っていた。小説の時もあったし、ビジネス書っぽいのもあった。家ではマンガも読むらしい。とにかくなんでも読んでいる。

 

休み時間に読書をするなんてわけがわからない。だって、読書って勉強じゃん。それを、どうして自由な時間にやらなきゃいけないのか。

 

先日、私がそんなことを言ったら、彼女は少し考えたように顎に手を当てていたのだけれど。今日、彼女は一冊の本を私に差し出してきた。

 

「これ」

 

「ん、なに」

 

「読んでみて」

 

「え、嫌だ」

 

まあ、そう言わずに。即答で拒否したのに、彼女にしては珍しい強引さで本を貸されてしまった。タイトルには、『読書をプロデュース』と書いてある。

 

「え、読めってこと?」

 

「うーん、どっちでもいいよ。読みたくないなら読まなくても。ただ、私があなたに読んでみてほしいって思っただけ」

 

今じゃなければいつ返してきてもいいからね。そう言い残して、彼女は行ってしまった。委員の仕事があるんだってさ。

 

私はその本をじっと見つめる。彼女は「どっちでもいい」と言っていた。つまり、読まなくてもいいということ。なら、私はとっととこの本を彼女に返せばいいだけだ。

 

でも、なんだかそれは負けた気分がして、ちょっと嫌だった。そもそも、彼女は私が本嫌いなのを知っているから、本を勧めてくることなんてなかった。

 

そんな彼女だからこそ、どうしてこの本に限ってはそうじゃないのか。そのことが気になって仕方がなくなってしまった。

 

「ううん、しょうがないなあ。ちょっとだけね、ちょっとだけ」

 

誰に言い訳するでもなく呟いて、その本を開いてみる。やっぱり、イラストはない。文字だけだ。読む気が失せながらも、前書きに「読書をしない、苦手、好きではないというあなた」と書かれていて、思わずどきっとする。

 

どうやら、この本は、私が読書嫌いなことを知っているらしい。ということは、それを踏まえたうえで書かれた本なのだということ。

 

この本はどうやら、「読書をしない人たちに、読書をおすすめする」ための本らしい。すごいなぁ、チャレンジャーだなぁ。

 

この本が推奨している方法、どれは「バラエティ読み」だという。いわゆるジャケ買い。表紙を見て、おもしろそうなら読む。

 

本を読む時、どこか「読むからには読まなきゃいけない」という強迫観念がある。私はそれが嫌な理由のひとつだったのだけれど、この本は「そんなことを気にしなくていいよ」と言ってくれていた。

 

つまり、「面白そうだと思ったものを読む。つまらなかったら読むのをやめる」。そんな適当でいいの? って思うけれど、いいらしい。

 

読書のキーは、「おもしろさ」。いろんなおもしろさを本の中に見つけることで、読書を楽しいものだと感じてみる。それこそが、「バラエティ読み」の真髄なのだという。

 

……なるほど、悪くないかもしれない。何より、この本が、「本を読まない人」を見透かして書いているのが、どこか癪に障った。いいよ、じゃあ読んでやるよ。我ながら単純だけど、そう思ってしまった。

 

「この本、ありがと」

 

「あ、うん」

 

「ところでさ、その、何か初心者におススメの本とか、ある?」

 

私がそう聞くと、彼女はきょとんとした表情をして、次いで嬉しそうに表情を綻ばせた。明日、選んで持ってくるね、と頼もしい返事をくれる。

 

「ところで、なんでこの本、私に貸したの?」

 

「読むのが嫌いなくせに読みたそうにしてたから」

 

彼女はそんなことを答えた。ちょっとムカつく、見透かされているみたい。結局、彼女の意図通りになってしまった私はもう何も言えず、彼女の細い肩を軽くどついた。

 

 

読書嫌いのあなたのための本

 

本書は「読書をしない、苦手、好きではない」「読みたい本がない」あるいは「本は読むけどビジネス書ばかり」というあなたが、「読書がおもしろくなる」「いろいろな本を読む習慣が身につく」ようになることを願って書きました。

 

と言われたところで、読書が苦手なら読まないですよね? でも、この本だけは読んでみてください。本書では、読書という行為を、どうプロデュースしておもしろくしていくのかを解説するので、ぜひ最後までお読みください。

 

読書プロデューサーの僕が提唱する読み方は「バラエティ読み」です。僕の定義として、バラエティとは多様性というものです。いろいろあるから、人生も社会もおもしろいと思いませんか?

 

そのおもしろいものを、変な先入観やレッテルを張らずに、まずは受け入れてみることが大事だと考えています。

 

「おもしろい!」は、あらゆる感情を乗り越えられる手段だと思います。つまり「バラエティ読み」とは、本から、いろいろなおもしろさを見つけ出す読み方なのです。

 

この本を読んだあとに、まずは1冊、本屋さんに行って、あなた自身の感性やセンスでジャケ買いしてみてください。

 

「やりたいことがない」「何をすればいいのかわからない」という人でも、本を読むことで人生を切り開くきっかけをつかめると思います。読書することで「活きる道」が見つかる可能性は格段に高くなるでしょう。

 

本が好きな人も嫌いな人も、ぜひこの本でバラエティ読みを知っていただき、読書のおもしろさに気付いたり深めたりしてもらえるなら、読書プロデューサーとして本当に嬉しいです!

 

 

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