なぜ非行少年はケーキを3等分できないのか『ケーキの切れない非行少年たち』宮口幸治
「ハッピーバースデイ、トゥーユー。お誕生日おめでとう」
入館ありがとうございます。ごゆるりとお寛ぎくださいまし。
「ハッピーバースデイ、トゥーユー。お誕生日おめでとう」
「私、魔法使いになるわ!」
「いやあ、肩身が狭い時代になったもんだよねえ」 蛇の目のかたわらに開いた長い舌の隙間から深いため息を吐き出して、大きな瞳をしょん...
本屋に行くと、私はまず真っ先に小説のコーナーに向かう。そこで目を皿にして本棚を見つめ続けている。
「今、授業でやってるやつさあ」 「あ、なんだっけ、『走れメロス』だっけ」 「あれ、あたし、好きじゃないんだよね。なんか暑苦...
時は戦国時代。天下を争奪しあう群雄割拠の時代である。一国を治める戦国大名たる某も、その尻馬に乗らねばならぬ。
私は本を読むのが好きである。文字に目を走らせ、現実から乖離し、紙の上に広がる空想世界に身を投じることが至福の瞬間なのだ。
私は本を読むのが好きである。クラスメイトの中の誰よりも本を読んでいるという自覚があった。
部屋を掃除していると、押し入れに何やら入っていた。引っ張り出してみると、それは大きなウチワである。 ただのウチワではない。表面...
「辛いか?」 格子の向こう側にいる看守が私に問いかける。身体を鎖でがんじがらめにされた私は、たしかに辛そうに見えるかもしれない。