対人関係に悩まない『嫌われる勇気』岸見一郎 古賀史健
「人から嫌われたくないんです」
入館ありがとうございます。ごゆるりとお寛ぎくださいまし。
「人から嫌われたくないんです」
ああ、面倒くさい。不意に、心の中にそんな思いが湧き上がる。そのことに、私はひとりで恐怖した。
疲れた。もう、その心の中に蔓延する感情を言葉にすることすらも私にはできなかった。
私は買い物が大好きだった。毎日のようにショッピングに出かけては、気になったものを探すのが楽しくて仕方がなかった。
「不思議なものだよな」
私は数学が嫌いだった。こんなものを学んでも何の役にも立たないと思っていた。その通りだ。数学は何の役にも立たない。
この戦いは、敗北するだろう。決して口には出さずとも、私はそのことを半ば確信していた。
静かに、寝られる場所が欲しい。それが、彼女が私に言った、ただひとつのわがままだった。
私は何もかもが欲しいと思った。私の欲望はとどまるところを知らなかった。だから、私は何もかも捨てることにしたのだ。
私は卒論のテーマを進めていた。私が選んだテーマは台湾の歴史についてである。