孤独ほど贅沢なものはない『極上の孤独』下重暁子
「孤独死ですって……かわいそうに、ねぇ……」
入館ありがとうございます。ごゆるりとお寛ぎくださいまし。
「孤独死ですって……かわいそうに、ねぇ……」
学生の頃から、私は歴史がどうにも苦手だった。特に、世界史となると、もうさっぱりわからない。
あとでやろう。今はちょっと、忙しいし。まとまった時間にまたやろう。そうしてまた僕は、先送りにした。
不思議なものだと思う。見下ろした自分の手のひらの、この柔らかい肌の下に、赤い血液が休みなく流れている。とてもそうは見えないのに。
昔は良かった。まるで老人のような感傷を、私もまた、抱くことになるとは思っていなかった。
「かーごーめー、かーごーめー、かーごのなーかのとーりーはー」
私、宇宙人なんですよ。といっても、地球で生まれたんですけどね。家族の中で、私だけが宇宙人なんです。
「いったいどうやって成功したんですか?」
「ほらほら、楽しいなあ。なあ、お前も楽しいだろ? 楽しいって言えよ!」
父、母、私。三人で食卓を囲む。楽しげに、日々のことを語り合う、仲睦まじい家族。私はその笑顔の下で、気持ち悪さを必死に押し隠していた。