自分らしくあること『フランス人は10着しか服を持たない』ジェニファー・L・スコット


 「フランス人は服を10着しか持たない」という噂を聞いた時、私はとても驚いた。たったの10着だけで、果たして生きていけるのだろうか、と思ったのを、よく覚えている。

 

 

 そのことが頭に残っていたからだろうか。その本を見かけた時、私は迷わず読んでみようと手に取った。

 

 

 本のタイトルはずばり、『フランス人は10着しか服を持たない』。ジェニファー・L・スコット先生の本。なんでも、ベストセラーになったくらい有名な本らしい。

 

 

 スコット先生は、大学生の頃、フランスのパリに交換留学生としてホームステイしていた。その本は、その頃の経験をもとに綴ったものであるという。

 

 

 アメリカ人のスコット先生は、フランスの人たちの生活に深い感銘を受け、その後の生活にも彼らのライフスタイルを取り入れて実践することにした。

 

 

 彼女の目から見る新鮮な驚きと好奇心に彩られた文章は、読んでいる私の目にも、色鮮やかなパリの街並みを広げてくれる。

 

 

 彼女は本当にパリという街そのものが好きなんだなと思った。それほどまで、彼女の描くパリは美しいから。そのホームステイしている時間は、彼女にとって本当に幸せだったんだろうということがわかる。

 

 

 フランス人は10着しか服を持たない。この噂が本当かウソか、なんて、どうでもいいことだ。大事なのは、この本に描かれているフランス人の彼女たちから、何を学ぶか、ということ。

 

 

 そもそも、どうしてフランス人は10着しか服を持たないのだろうか。貧乏だから? いや、そうじゃない。

 

 

 彼女たちにとって、それ以上は必要ないからだ。10着あれば十分。ただ、不要なものを削っていった結果が、10着であるだけ。

 

 

 この本を読んで、思い浮かべたのは自分のクローゼットだ。目で見ずともわかる、そこにはたくさんの服が詰め込まれている。

 

 

 けれど、その服のほとんどを、私は着ていない。一度か二度着ただけのものもあるし、きっと、存在すら忘れている服すらある。

 

 

 いつか着るから。もっと痩せないと着れない。お気に入りだったから、捨てるのもなんだかもったいないし。そんな誰にとも言わない言い訳を繰り返してため込んできたのが、その服たちだ。

 

 

 けれど、どんな言い訳をしていたとしても、結局それを着ることは、もうないのだろう。着ないなら、服の意味がない。

 

 

 その本は、迷っていた私の背中を押してくれた。ゴミ袋がこれでもかというほど膨らんだ時、私は自分のクローゼットを見て、とても清々しい気持ちになった。

 

 

 モノが多ければ多いほど、安心できる。それは、現代の時代に生まれた私たちの抱える、ある種の病気なのかもしれない。

 

 

 モノがあることの幸せを盲信するあまり、モノがないことを不幸だと思うようになってしまった。だから、いらないモノまでも手当たり次第に集めてしまう。

 

 

 そうじゃないのだ。自分に必要なものだけを持つ。それこそが、この本の言うところの、「シックなフランス人」のようなライフスタイルへの第一歩になる。

 

 

 高級で、かわいい服、セクシーな服をかき集めることがオシャレじゃない。自分に似合う服を身につける。それこそが、オシャレなのだ。

 

 

 無理に痩せようとしなくてもいい。高い服なんて身につけなくてもいい。みんながやっているからって、流行を必死に追いかけたりなんてしなくてもいい。

 

 

 ありのままの自分を受け入れて、最大限、自分自身を美しくすること。毅然として風を切るその自信に満ちた姿を、私たちはフランス人から学ぶべきなのかもしれない。

 

 

フランス人のライフスタイル

 

 2001年1月、わたしは交換留学生としてパリへ行き、フランス人の家庭にホームステイすることになった。

 

 

 ロサンゼルスを後にして、南カリフォルニア大学の仲間たちと一緒に飛行機に乗り込んだわたしは、人生を大きく変えることになる冒険に乗り出したのだった。

 

 

 でも、あとときわたしの頭にあったのは、「これから半年間パリで暮らす」ということだけ。

 

 

 でも正直に言うと、そんなわくわくした気分も、心配ごとを思い出すたびにしぼんでしまった。

 

 

 けれどもパリに着いて数日後、ホストファミリーの家のダイニングルームでフルコースのディナーを味わっていたわたしは、出会ったばかりの素敵な家族にすっかり夢中になっていた。

 

 

 実は、ムッシュー・シックの一族は貴族の末裔だった。洗練された暮らしの伝統は、名高い先祖から受け継がれ、一族の人々が何代にもわたって守ってきたものだった。

 

 

 だからホームステイが始まったばかりの頃は、フランスの家庭というのはどこもかしこまった感じなのかと思っていた。ところがそんな時。わたしはマダム・ボヘミアンヌの一家と知り合ったのだ。

 

 

 このふたつの家庭のライフスタイルは似ても似つかなかったけれど、どちらの家庭も素敵な毎日を送っていた。

 

 

 当時大学生だったわたしには、パリにいる間に学びたいことが山ほどあったけれど、「人生の生き方」についてこれほど多くのことを学ぶだろうとは、思ってもみなかった。

 

 

 それは、本当の意味で「生きる」ということ。しなやかに、力強く生きていくということなのだ。

 

 

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