なぜ、何度も見たくなるのか『ジブリアニメを心理分析』清田予紀


好きなジブリアニメは何?

 

職場の上司や、学校のクラスメイト、新しく出会った人との間で、何度かこの質問をされることがある。

 

私は幼い頃からジブリアニメに親しんできたけれど、年齢も性別も問わず、多くの人の共通した話題として挙がるのだから驚くばかりだ。

 

ちなみに、私の答えはいつも『千と千尋の神隠し』だ。人気作であることに加えて年代もピッタリで、放送されるたびに録画して何度も見返していた。DVDも持っていたし、資料集のようなものも読んだことがある。

 

もっと幼い頃は『平成狸合戦ぽんぽこ』を夢中で見ていた。ストーリーはよく理解していなくても、妖怪たちが大行進している場面は今でも心が躍る。

 

もちろん、『天空の城ラピュタ』や『風の谷のナウシカ』も、『もののけ姫』も『となりのトトロ』も、昔から大好きだった。

 

成長してストーリーの意味がわかるようになると、より一層おもしろくなった。子どもの頃にはよくわからなかった『紅の豚』や『ハウルの動く城』の良さに気付いたのも、大人になってからのことだ。

 

好きな作品を列挙していけばきりがない。それほどまでに、私はジブリ作品に心を掴まれている。そして、それはきっと、私だけではないのだろう。

 

でもどうして、こんなに何度も見ても飽きもせず、ジブリ作品というものはおもしろいのだろうか。年代も関係なくここまで愛されるアニメというのは、他にはなかなかない。

 

実は、ジブリアニメを調べてみると、多くの研究者が研究の対象としている。同じような疑問を持つ人は、多いのだろう。幅広い年代の人たちに愛されているからこそ。

 

でも、正直、堅苦しい論文はどれもよくわからない。小難しい専門用語ばかりで読んでいると頭が痛くなってくる。というわけで、調べるのはとんと続かなかった。

 

そんなことが気になっていた頃、会社の上司から本を一冊、おすすめされた。心理カウンセラーの清田予紀先生の書いた『ジブリアニメを心理分析』というタイトル。

 

その本によると、ジブリアニメには私たちの心に訴えかけてくる多くの心理学が組み込まれているのだというのだ。

 

それを明らかにしていくことで、どうしてジブリアニメがこれほどまでに人の心を捉えてやまないのか、という秘密を見つけよう、というものである。

 

ジブリアニメに使われている心理学とは何か。

 

例えば、『もののけ姫』に登場するタタラ場を治める女主人、エボシと、『風の谷のナウシカ』に登場するトルメキアの皇女クシャナ。彼女たちにはどこか似ているところがある。

 

それだけではなく、彼女たちのそばに控える怪しげな側近たち。クロトワとジコ坊にも、どこか共通点がある。どうしてだろうか。

 

また、例えば、『ハウルの動く城』で、魔法によって老婆に変えられてしまう少女、ソフィー。けれど、作中ではたびたび、彼女の容姿が元の若々しい年齢に戻っている描写がある。どうしてだろうか。

 

さまざまなジブリ作品の魅力の秘密を、その本はひとつずつ解き明かしている。読みやすくて、それでいておもしろかった。

 

ジブリ作品には、作中で明かされない多くの謎がある。『ハウルの動く城』のソフィーの容姿もそうだし、『紅の豚』の結末や、『千と千尋の神隠し』の神々の世界。

 

それらを解き明かすことを、無粋だと思う人もいるかもしれない。おもしろいんだから、それでいいじゃないか、と。

 

けれど、ストーリーやキャラクター、世界観の秘密を知り、ジブリアニメの魅力を知ることができると、より深く物語を楽しめるようになる。

 

そのことは、かつては子どもとしてジブリの映像美を楽しんでいたあなたが、大人になってストーリーの奥深さを楽しめるようになったのだから、知っているんじゃないだろうか。

 

ジブリアニメを見る時、私たちはいつも子どもに戻っている。スペクタクルに興奮し、映像美にほっと息をつき、クライマックスで手に汗握る。どんなに年齢を重ねても、心の中にはジブリが大好きな子どもの頃の自分がいるんだ、今もまだ。

 

 

ジブリアニメの魅力

 

ジブリアニメは「魔法の王国」だな、とつくづく思います。どの作品も始まった途端、めくるめく世界が待ち構えていて、私たちのハートをギュッとわしづかみにしてしまいます。

 

なによりふしぎなのは、何度観返しても新たな発見、新たな感動があることです。ラビリンスのように奥が深いのです。

 

本書は、そんなふしぎで魅力あふれるジブリアニメの世界を「心理学」というめがねを通して見てみるならば、「どんなふうに見えるのだろう」「どんな新たな発見があるだろう」という期待と好奇心から生まれたものです。

 

人間の「心のふしぎ」を解明するのが心理学。ならば、「ジブリアニメのふしぎ」を解明するのにも役立つのではないか……。

 

ジブリアニメの世界はとんでもなく奥が深く、探っていくのにひと苦労もふた苦労もしましたが、新鮮な驚き、新鮮な発見があったのは確かです。

 

その驚きや発見を是非、ジブリアニメのファンはもちろん、これから観ようと思っている方にも味わっていただきたいと思い、筆をとりました。

 

嬉しいことに、ジブリ作品はその人気ゆえに何度となくテレビでも放映されます。この本をそのお伴にしていただければ幸いです。

 

 

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