抜け道を見つけよう『ひろゆき流ずるい問題解決の技術』西村博之


生まれてからずっと真面目に生きてきた。卑怯なことやずるいことが嫌いで嫌いで仕方がなかったし、そんなことをする奴らが全員許せなかった。その考え方が変わってきたのは、最近のことだ。

 

それまで僕の人生は順調だった。友達は少なかったけれど、まったくいなかったわけじゃない。大きな挫折もなく、成績もそこそこだった。

 

大きな失敗はなく、波風もない、平坦な人生。受験も就職もつつがなく成功した。自分はずっとこんな感じの人生を送るのだろう、と、思っていた。その当時は。

 

今の僕は、仕事を退職し、うつ病で働くこともできず、ただ失業保険を受け取りながら起きて寝るだけの生活を送っている。

 

仕事での人間関係が上手くいかなくなったことを皮切りに、今まで回っていたはずの歯車がところどころ軋みだした。一度壊れてしまえば、あとはもう、あっという間だった。

 

初めて味わった大きな挫折に、僕の人生は破壊されようとしていた。今までそんな経験がなかった僕には、その危機を乗り越える度胸も知識もなかった。

 

見かねた友人からその本を勧められたのは、そんな頃だった。『ひろゆき流ずるい問題解決の技術』というタイトル。

 

「ひろゆき」という名前は、ネットでよく目にしていた。今まで大して興味がなかったから、名前を知っているだけで詳しくはなかった。

 

その当時はやることもなかったから、普段は手に取らないようなそんな本でも読んでみる気分だった。それが僕の中の全てを変えるとも知らず。

 

その本で語られていることは、僕の常識を打ち破るものだった。真面目に生きてきた今までの僕ならば、決して受け入れられないような。

 

たとえば、配達のバイト。ひろゆきさんはルートを逸れて、抜け道を通ることで近道をした。残った時間はどこかで休んでいたという。

 

僕ならば、愚直に決められたルートを走っていることだろう。たとえ、それが効率の悪いやり方であったとしても。

 

僕は自分の決められた仕事が時間内に終わらなくて、毎日のように残業をしていた。サービス残業をしたこともあるし、休日に職場に行って仕事をしていたこともある。

 

上司から言われたことを、その通りに、真面目にやっていた結果だった。けれど、今にして思えば、あのやり方は果たして改善できるところがなかっただろうか。

 

問題を解決する。周りからしてみれば、その結果さえあればいいわけだ。コツコツと地道にそこまで進めようとする僕と、抜け道を使って素早くその結果に辿り着くひろゆき氏。どちらがより良いのか、そんなのは明白だった。

 

以来、僕は少し考え方を変えてみた。今までのように真面目にするのではなく、適度に抜け道を探してみて、楽をするようになった。

 

その結果、周りの人たちからの評価は良くなり、自分自身も、とても気楽に肩の力を抜いて生きていけるようになった。

 

今、僕は別の仕事をしている。もうあの頃のように頑張りすぎる気はない。ちょっとばかり「ずるい」方が、この世の中は生きやすいのだと気がついたから。

 

子どもの頃、「ズル」をしてはダメだと教えられた。でも、正直、大人はみんな当たり前のような顔をして「ズル」をしている。この社会なんて、そんなものなんだ。

 

 

ずるしてもいいじゃない

 

生きていると、いろいろな問題に直面します。「生きていて困ったことが何ひとつない」という人は、いないでしょう。

 

そうなると、問題解決力が高いほうが、うまく生きられるわけです。「問題解決」というと、最近ではビジネス書のテーマとしても人気のようですが、別に難しいスキルではありません。

 

じつは、選択や判断も問題解決のスキルだったりします。なので、誰でもふだんから使っている能力なんですよね。

 

問題解決力が高い人は自分で問題を設定することもできるので、目標を実現する能力も高くなるでしょう。というわけで、本書では初めて、僕の問題解決のメソッドを体系的に説明したいと思います。

 

ただ、僕の問題解決の方法は、ほかの人とかなり違うかもしれません。僕は問題解決をするときに、人から”ずるい”と思われる手段も含めて解決策を考えます。

 

「ずるい」にもいろいろあります。僕は、物理的な被害や被害者がいないのであれば、問題解決をするときにずるい手を使うのはアリだと考えています。

 

僕は問題解決をするときには、まず「どこかに抜け道はないか?」と考えます。でも、抜け道を選ぶということは、もちろんリスクもともないます。

 

あと、勘違いしてはいけないのは、抜け道を見つけたからといって努力が不要になるわけではありません。

 

なので、この本で言う「抜け道」というのは、考え方です。自分の考え方を少し変えることで、無駄な努力や回り道をしなくて済む、という意味です。

 

「どこかに抜け道はある」そういう前提で物事を見るクセをつけると、結果として抜け道を見つけやすくなります。そうしたらきっと、いまよりも、人生でうまくいく確率が上がるはずです。

 

 

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