本物の正義を目指して『偽物語』西尾維新
「本物と、それとまったく同じ、区別もつかないような偽物があったとしたら、どちらのほうが価値があると思う?」
入館ありがとうございます。ごゆるりとお寛ぎくださいまし。
「本物と、それとまったく同じ、区別もつかないような偽物があったとしたら、どちらのほうが価値があると思う?」
幼い頃の私の一番古い思い出は、彼に頭を撫でられる記憶でした。その手がとても大きかったのを、よく覚えています。
「『想い』ってのは大変なものだよね」
我が校には探偵部なる部活が存在する。所属している生徒も顧問の先生も何者かわからない、半ば都市伝説じみた存在である。
「電車の中ではいろいろなことがある」
四畳半での修業は過酷を極めた。こと人間の本能である恋愛への渇望、男としての欲望は如何ともしがたいものがあった。そこで私は自らを慰めるべく恋愛小説の『夜は短し歩けよ乙女』を拝読することによって甘い恋愛の世界の中へと身を委ねんと考えたのである。
「さあ、今からあなたたちは奇跡を目の当たりにするのです!」
私は激怒した。いや、これは怒髪天を衝くよりも悲しみに押し流されているのが正しかろう。
私は扇風機の前にその身を横たえた。棒付きのアイスをシャリシャリかじりながら、畳の静かな香りを嗅ぐ。
吾輩は猫である。名前はまだない。我が主人である夏目金之助は、神経衰弱から逃れるために一篇の小説を書き始めた。主役は吾輩である。後にその小説が世に出回り、吾輩が日本一有名な猫になろうとは吾輩も主人もまだ知らない。ともあれ出演料に鰹節をよこせ。