愛すべき狸の家族たち『有頂天家族』森見登美彦
吾輩は狸である。名前はまだない。人間の姿で、日がな一日を気ままに過ごしている。
入館ありがとうございます。ごゆるりとお寛ぎくださいまし。
吾輩は狸である。名前はまだない。人間の姿で、日がな一日を気ままに過ごしている。
私には好きな人がいます。ずっと、ずっと、私は彼のことが好きでした。
彼女に『死神の精度』という本を借りてくるよう頼まれ、図書館に来た僕は、奇妙な男に話しかけられた。本を探すのを手伝ってくれたけれど、彼は「死神」のことを話し始める。その特徴は、僕が最近知り合った人に、どこか似ているような気がした。
高校に通っていた頃、クラスメイトにひとり、変わった子がいたことを、今もまだ覚えています。
「もしも、タイムマシンがあったら、何をしたい?」
「あなたは、今まで生きてきた中で嫌な思い出とかは、ございませんでしょうか。いっそ、忘れ去りたいほどの」
黒い雨が大地に降り注ぐ。さながら、かの人の最期を世界が悲しんでいるかのようだった。
ああ、喉が渇く。私は忌々しげに喉を掻き毟る。しかし、それでもこの堪えがたい渇きを癒すことは出来ない。
「本物と、それとまったく同じ、区別もつかないような偽物があったとしたら、どちらのほうが価値があると思う?」
「『想い』ってのは大変なものだよね」