自然との関わり方を学ぶ『獣の奏者』上橋菜穂子
昔、ハムスターを飼っていたことがある。つぶらな黒い瞳がかわいらしい、身体の大きな子だった。その仕草をぼんやりと眺めているだけで、幸せだった...
入館ありがとうございます。ごゆるりとお寛ぎくださいまし。
昔、ハムスターを飼っていたことがある。つぶらな黒い瞳がかわいらしい、身体の大きな子だった。その仕草をぼんやりと眺めているだけで、幸せだった...
この世界ではないどこかに、本当の居場所がある。子どもの頃から、心の端でそう思っていたことがある。自分は生まれる場所を間違えた。そんな妄想。
我々日本人とは、いったい何者なのか。「日本に住む人」などという単純明快な解答もまた正解のひとつではあるが、決してそれだけではないだろう。そ...
化け物になりたい。そんな空想を、毎日のように頭の中に思い描いていた。そうすれば、人間であるからこそのあらゆるしがらみを、気にしないでいられ...
ああ世の中は実にコントのようなものだと思うのですよ。真面目に生きようとすればするほどおかしくなる。いっそ狂っちまった方がよほど賢いのではな...
「おおロミオ! どうしてあなたはロミオなの!」
「やあ、みいちゃん」 「みいちゃんじゃないわ、チェシャ猫さん。私、アリスよ」
私は玉座に座る男を見遣る。前王を滅ぼし、王になった男。眼下を静かな瞳で睥睨する男の表情には、どこか寂しげな、孤独の色があった。滅びの足音は...
健康になりたいと、多くの人は言う。健康法なんてものはもう、飽きるほどに生まれては消えているが、何よりも忘れてはならない。我々は口から食した...
耳から入ってきた音に、思わず眠りから覚めた。目をつぶったまま、音に意識を傾ける。車の音が、まるで間近を走っているかのようにうるさかった。し...