人生はドラマで満ちている『天使の竪琴』望月麻衣
人生は面白い。ほんの些細な日常の中にだって、いくつものドラマが溢れている。あの頃の私は、そんなことにすら気が付いていなかった。
入館ありがとうございます。ごゆるりとお寛ぎくださいまし。
人生は面白い。ほんの些細な日常の中にだって、いくつものドラマが溢れている。あの頃の私は、そんなことにすら気が付いていなかった。
私は選ばれし人間だ。私の想い通りにならないことはない。かつての私は、愚かにもそう信じて疑わなかった。
彼女のことを誰よりも守りたいと思う。けれど、彼女にとって一番危険なのは、僕自身なのだ。
青春は果てがない。果てがない世界を、私たちは目指すところも知らずただ歩くしかないのだ。私たちは誰もが、ただの迷える子羊に過ぎない。
どうしてこんな力を私が持っているのか、わからなかった。いっそのこと、普通の女の子だったなら、こんな思いはしなかっただろうに。
豪奢に飾られた玉座。それは多くの犠牲の上に立つ、呪われた場所だ。俺は震える身体を抑えつけて、その椅子に、腰かけた。
親譲りの無鉄砲で、子どもの時から損ばかりしている。真っ直ぐな青年、坊っちゃんの人情活劇。坊っちゃんは我が主人、夏目金之助と同じように教師となり、松山に赴任した。無鉄砲で喧嘩っ早いが愛されるべき坊っちゃんに、我が主人は何を思うのか。
子どもの頃から赤ちゃんが欲しかった。愛する人との子どもを産んで、幸せな家庭を築くことが私の目指す幸せだった。
窓から見下ろすと、庭師に手入れされた大きな庭が広がっている。生まれた頃から見てきたそれが、今は少し恨めしく思う。
その時の光景を、私は二度と忘れないだろう。私はその時、たしかに見たのだ。彼女の背に、二対の白い翼が開くのを。