怪異に惑わされる青春『化物語』西尾維新
「『想い』ってのは大変なものだよね」
入館ありがとうございます。ごゆるりとお寛ぎくださいまし。
「『想い』ってのは大変なものだよね」
幼い頃から私は写真に撮られることを苦手としていました。
「君は、驚かないんだな」
ビートルズの『ノルウェイの森』が誰もいない部屋に流れている。私は広すぎるソファに寝転んで、ぼんやりとそれを聞いていた。
あれは、いつのことだったろうか。私は失くしてしまった思い出を手繰り寄せる。
祖父が亡くなったときのことを今でも覚えている。母方の祖父は私の覚えのある頃にはもういなくて、私の知っている祖父はひとりだけだった。
私は学校の屋上に立っていた。吹きすさぶ秋口の強い風がコンクリートに寝そべる土埃を舞い上げる。
人間とはつくづく不思議なものである。こうして人間の姿で世の中に溶け込んでいると、強くそう思う。
彼女は幼馴染だった。幼稚園の頃から同じクラスで、小学校、中学校といっしょだった。
「なあなあ、これって絶対UFOだよ、なあ!」