一枚の絵画の裏にある物語を見つめる原田マハ先生のアート小説3作品まとめ
絵画が立ち並ぶ通路を、私は辺りを見渡しながら歩いていた。美術にあまり造詣が深くない私でも、知っているような有名な絵ばかりだ。
入館ありがとうございます。ごゆるりとお寛ぎくださいまし。
絵画が立ち並ぶ通路を、私は辺りを見渡しながら歩いていた。美術にあまり造詣が深くない私でも、知っているような有名な絵ばかりだ。
ああ、この光景、いつだったか、見たことがあるような気がする。俺は漠然と、そんなことを考えていた。
自分が愛おしいと思う相手のために、自分自身の一生を犠牲にしても尽くすことが果たしてできるか。
昔々あるところに、おじいさんとおばあさんがおりました。おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。
昔、理科の実験が大好きだった時期がある。小さなアルコールランプを、胸を躍らせていたあの頃が。
カウンター席には俺ひとり。店内に流れるジャズに耳を傾けながら、『探偵はバーにいる』を読んで、グラスを傾ける。それが俺の至福の瞬間だ。
ピカソの『アヴィニョンの娘たち』を見た時、首を傾げたのを今でもはっきりと覚えている。
このまま時間が止まってしまえばいいのに。教室の隅でひとり、私はそんなことを思った。
幼い頃、私は絵本に書かれている物語を、本当にあったことだと信じていた。それが虚構だと知った今でも、時折、本当にあったのではないかと心の片...
ソファに腰かけて新聞をめくる。今日も依頼人は来る気配がない。新聞に載っている記事は今日も平和だ。つまらん。