思い込みを捨てて、無理せず痩せよう!『無理なくやせる”脳科学ダイエット”』久賀谷亮


 鏡を見て、私はため息を吐いた。まるでドラム缶。自分のでっぷりと膨らんだ腹の肉をつまむ。いっそのこと、こいつもステーキにして食べてしまいたいくらいだ。

 

 

 昔はこうじゃなかった。学生の頃の私はむしろ痩せていて、みんなに人気のイケメンから告白されるくらい可愛かったのだ。

 

 

 歯車が狂い始めたのは、就職してから。入社した会社は厳しいところで、甘やかされてきた私にはただただ辛い場所だった。

 

 

 上司との折り合いが悪く、何度も呼び出されては怒られた。理不尽な理由のこともあったし、他の社員がしたことを私に押しつけられたこともあった。

 

 

 男性の社員は私に甘かったけれど、次第に彼らの態度も硬化していった。その理由は、私が太ったからだ。

 

 

 仕事のストレスから逃げるため、私は食べることが癖になった。怒られたら、食べる。その繰り返しの日々だった。

 

 

 学生の頃は太らないことが自慢だったけれど、そんなわけはない。私は当然のように太った。気が付いた時にはもう何もかもが遅かった。

 

 

 甘やかしてくれていたのは、私が美人の女だったからだと気が付いたのは、太ってからのことだ。上司だけでなく、同僚の男性からも、私は軽蔑の視線で見られるようになった。

 

 

 ダイエットしよう。あの頃の自分を取り戻す。歯車が歪んでしまったのは、私が太ったからだ。私は真剣にそう信じていた。

 

 

 しかし、私はすぐにダイエットがいかにきついか、思い知ることになった。学生の頃、みんながダイエットは苦しいと言っていた理由がよくわかる。

 

 

 私は何度も挫折した。リバウンドして、むしろ体重が増えてしまうことすらあった。

 

 

「我慢しなきゃね」

 

 

 教えてくれた友人はそう言ってくれた。しかし、その瞳の奥には呆れが見える。こんな簡単なこともできないのか。そんな辛辣な言葉が聞こえた。

 

 

 私に我慢なんてできなかった。ダイエットを実践した反動は、数キロのリバウンドとして返ってきた。

 

 

 どんなダイエットを試しても、結果は変わらない。私には、もう無理なのだろうか。鏡の中の私が肩を落としてうなだれた。

 

 

 ふと、視線の端に一冊の本を見つけた。それは、『無理なくやせる”脳科学ダイエット”』という本だ。

 

 

 ダイエットなのに、脳科学? 私は首を傾げる。こんな本、買ったっけ。ちっとも覚えていなかった。けれど、縋るような思いでぺらぺらとめくってみる。

 

 

 そこに書かれていたのは、今まで試してきたどのダイエットとも異なる、あまりにも首を傾げるような方法だった。

 

 

 今まで試してきたのは、食事法を変えたり、何かを食べたりするものだ。けれど、その本に書かれていることによると、それは間違っているのだという。

 

 

「あなたが悪いんじゃないよ」

 

 

 私は思わず涙を流す。まるで、その本はそう言ってくれているかのようだった。

 

 

 ダイエットに失敗するたびに、私は自分を責めた。もしかしたら、自分はダメ人間なのではないだろうか。そんな卑屈な思いが私の心を蝕んでいた。

 

 

 その苦しみを、その本は晴らしてくれたのだ。思わず抱きしめて、それからまた続きを読む。

 

 

 それは、『痩せる食事法』ではなく、『痩せることのできる脳』に変えるというものだった。

 

 

 つい食べてしまう。そんな脳自体を変えることにより、結果的に痩せることができる、というものだ。

 

 

 本当に、そんなことができるのだろうか。自分を慰めてくれた本とはいえ、内心で疑問を抱く。

 

 

 いや、でも。私は首を振って、考えを改める。試してみよう。この本は、今までのダイエットとは大きく違った。

 

 

 私は今まで学生の頃に戻りたいと思ってきた。でも、そんなことはできない。私は、過去じゃなく、未来の痩せた自分と会わなければならないのだ。

 

 

 そう決めた途端、鏡の中の私が一瞬、微笑んだ。すらっとした、美人の私がそこにいた。思わず目を瞠ると、そこにはいつも通りの私がいた。

 

 

 あの光景は何だったのだろう。いや、でも。彼女とまた会いたい。やってみよう、脳科学ダイエット。私は決意を込めて、その本をぎゅっと抱きしめた。

 

 

今までの常識をくつがえすダイエット法

 

 「いろいろ試したけど効果がない……」「ついつい食べてしまい続かない……」「食べるのを我慢するのは嫌……」「いつも失敗して自己嫌悪に陥る……」

 

 

 巷にあるダイエット法に対して、多くの人が抱える悩みは共通していますよね。しかし、やり方は多様なのに、なぜこうも似たような悩みばかりを生み出すのでしょう。

 

 

 これに対する答えは、実はシンプルです。それらは「とにかくこれを我慢しなさい!」と私たちに命令するものの、「どうすれば我慢できるのか?」を教えてくれないからです。

 

 

 世の中のダイエット法が、「食事」を変える方法は教えてくれますが、私たちの「食行動」や「欲求」を変えることには無頓着です。

 

 

 それに対して本書は、みなさんが「正しい食行動」を会得するためのヒントを差し上げます。これによって、みなさんが何かを食べる時の「脳のクセ」が大きく変わります。

 

 

 だから「我慢」や「自制心」は必要ありません。脳そのものを買えてしまえば、「がんばる」ことなく、ごく当たり前のように痩せていくことができます。

 

 

 「食べる」という行動は、脳によって調整されています。食べ方の習慣も、食べたい欲求も、脳が「学習」したものです。

 

 

 つまり、あなたがついつい食べてしまうのは、「やせられない脳」になっているからにほかなりません。

 

 

 食べたくてしょうがないという欲求は、食べ物への「依存」から生まれます。食べることは快楽ですから、そこに依存が生まれるのです。

 

 

 意志を支えている脳の中で、自制心だけで何とかするというのは、そもそも無茶な話です。しかし、「ある方法」を通じて脳に働きかけを継続すると、快楽中枢の暴走を鎮められることがわかってきました。

 

 

 その方法というのが「マインドフルネス」です。本書は、マインドフルネスをベースとしながら、食行動を変えるさまざまなアプローチを統合して、総合的なダイエットとして発展させました。

 

 

 脳科学に基づいて、あなたの脳を変え、その結果として「無理なくやせる」ことを可能にする――これが本書の狙いです。

 

 

 本書のを読み進め、この方法を実践する中で、みなさんの「脳と心「はきっと変化していくことでしょう。「食」と「自分」が深いところで変わっていくプロセスを、ぜひ楽しんでいただけたらと思います。

 

 

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