本を読むのは昔から好きだった。けれど、好き嫌いはあった。たとえば私は、物語が好きだった。そして、ビジネス書はどちらかというと、嫌いだと感じていた。
どうしてそれほどまでに、ビジネス書が嫌いだったのか。物語が好きな理由はいくらでも答えることができるのに、ビジネス書が嫌いな理由は頓と思い浮かぶことはなかった。
貧乏だったがゆえにお金を稼ぐことに対して無意識に忌避感を覚えていたからか。あるいは、ビジネスというものをそもそも自分とは無縁だと考えていたか。
はっきりとした理由はわからない。ただ、いろんな理由が入り混じり、その結果として私がビジネス書を嫌っていたことだけは事実だった。
そんな私が主義を一転させてビジネス書に読むことに没入していくようになったのは、社会人になって一年後ほどのことだった。
当時、仕事で精神的に疲弊し、職を失った失意の中にいた私に、友人が勧めてくれたのは、一冊の本だった。それは、『金持ち父さん貧乏父さん』という本である。
なんでも、ベストセラーになったほどのビジネス書らしいのだが、最初見せられた時、私は今までと同じように「ビジネス書なんて」と強い忌避感を示した。
しかし、友人から「物語みたいなところもあるから、きっと読みやすいと思うよ」と強く勧められ、渋々ながらも「それなら試しに」と押され気味に読むことにしたのである。
そして、友人の言葉は正しかった。それは、私の中にあったビジネス書のイメージを吹き飛ばすほど、私の常識をひっくり返し、かつ面白く読めたのだ。
以来、私はビジネス書の魅力に囚われてしまう。それまで物語一色だった私の本棚には、ビジネス書が立ち並ぶようになった。
しかし、次第に私の中にひとつの悩みが生まれてくることとなる。それは、どんな良いビジネス書というものがどんなものか、わからなかったということである。
世の中には無数の本が出回っている。その中から物語を除いても、一生かかっても読みきれないほどのビジネス書がある。しかも、それは日々増え続けているのだ。
それだけあるビジネス書の中から、何を読めばいいのか。それがわからなかった。そこで私が考えたのは、「ビジネス書を紹介するビジネス書」を読めばいいのではということであった。
そんなわけで、図書館から見つけてきたのが、水野俊哉先生の『新「ビジネス書」のトリセツ』である。先生はビジネス書を読むことで人生の苦境を乗り越えてきた経験があるのだという。
その本を読んで何より助かったのは、学びたいジャンルごとにどのビジネス書を読めばいいか、具体的なタイトルを教えてくれることだ。
現代、ビジネス書はただお金を稼ぐ方法や考え方を教えてくれるだけにとどまらなくなった。自己啓発と称して仕事をはじめ、あらゆることを学ぶことができる。
今やビジネス書はあまりにも多く枝分かれして、細分化された。その分、学びたい内容を的確に学んでいかないと間に合わない。
けれど、『新「ビジネス書」のトリセツ』では、それをわかりやすく教えてくれる。ビジネス書を探している時にこの本と出会えたことは運が良かった。
悔いるのは、昔の私のことである。無駄な先入観から読書の幅を狭め、ビジネス書というだけで読むことを拒絶していたあの頃の凝り固まった思考の私である。
今の時代、働き方が多様化し、会社に勤めることの安定性がなくなっている。個人のスキルがより重要になってくる時代になった。
あらゆる広範な知識、発想の柔軟性、ビジネスのスキル。数あるビジネス書はそれらを学ぶことを手助けしてくれる。
知識は決して失われることがない資産だ。それはいずれあらゆる形に活かすことができる。ビジネス書は、その資産を私たちに与えてくれる最高の友人なのだ。
ビジネス書の説明書
「読書」という行為には人生を変える力がある。僕は、自分自身が読書ひとつでどん底の淵から再生した経験があるので、断言できる。
ただ問題は、どう読むかであり、それ以前に何を読むか、読書で得た知識をどう活用するか、というところまで読みこむ必要があるだろう。
僕自身が活動していくベースは、すべて読書と自分の人生経験によって培われたものである。本を読んで行動することにより、自分自身の経験が深みを帯びていく。
今の生活が苦しくてたまらない時、ビジネス書を読んでみてほしい、と僕は言いたいのだ。
ビジネス書には仕事や人生のあらゆるシチュエーションで役に立つ知識が書いてあるし、ビジネス書で身につけた知識を正しく仕事や人生において実践することで、生きるスキルがアップする。
ビジネス書を読んで、身につけた知識を栄養にして仕事や人生のスキルを磨いてもらい、ビジネススキルのマッチョマンになる方法が、この一冊に凝縮されている。
本書は、「本を読んで、書いて、しゃべって、教える」ことを1サイクルにして、あなたの知的生産力、「知識を換金する力」を養うヒントになればと思いながら書いている。ぜひ本書を読んで、本と一緒に旅に出てほしい!
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