仕事、恋愛、結婚……さまざまなことに疲れているあなたへ『女はみんな「うつ」になる』香山リカ


女になんて、産まれたくなんてなかった。私の疲れ切った心は、思わずそう叫んでいた。もしも、男だったなら、こんなにもつらくなんてなかっただろうに。

 

「うつ病」だと診断されたのは、大学を卒業した後、最初の仕事に就いていた頃のことだった。そう聞かされた時も、当時の私はただぼんやりとしていたように思う。今では、その頃の記憶は靄がかったようになっていた。

 

仕事は一年ほど勤めたが、結局、馴染むことはできなかった。頑張っても上手くいかず、同期のかわいい女の子が同じ失敗をしても上司に許されている隣で、私だけは激しく叱られた。

 

社会に出て、つくづく、この社会は男のためにできているのだと実感する。会社の上層部は中年の男ばかりで、かわいくて愛想のいい女の子は、何もできなくても優遇される。

 

その一方で、そうではない女は、他の男性以上の結果を求められ、褒められることもなかった。失敗すれば、激しく怒られ、「これだから女は」とまで言われる。同期の男性社員が昇進していく中で、私だけが変わらなかった。

 

世界が、私を殺そうとしているのではないか。そんなことすら思っていた。いや、当時の私からしてみれば、真実、世界に殺されかけたのだ。

 

親に相談しても、「だから働くなんて」と言われるばかり。「いい学校に入れ」とずっと言ってきた親は、今では「早く結婚しなさい、仕事ばかりだと行き遅れるわよ」と言っている。

 

親の望む通りに、いい学校に入るために頑張って勉強していた私は、男子からはずっと遠巻きに見られていたように思う。そして、それは会社に入って仕事を頑張っても同じことだった。

 

私の人生は、いったい何だったのだろうか。ため息を吐くと幸せが逃げていくという。私の中に、逃げていくだけの幸せなんて、果たして残っているのかな。

 

生きているのがつらかった。女でいることがつらかった。この世界は、男のための世界だ。男女平等なんて叫ばれていても、この世を回している法則は、結局、何も変わっていない。

 

うつ病が理由で会社に通えなくなり、辞めることになった時、上司は、どこか嬉しそうにも見えた。誰もかれもが、見送りの言葉をかけながら、「寂しいね」とか言いながら、笑っていた。

 

その本と出逢ったのは、そんな時だった。会社を辞めて、外に出る気概もなく、ただ家で過ごしていた頃、心配して訪ねてくれた友人が貸してくれたのだ。香山リカ先生の『女はみんな「うつ」になる』という本である。

 

その時に打ち明けてくれたのだが、実は、その友人も就職してすぐ、うつ病になったのだという。彼女も苦しんだが、その本を読んで少し癒されたという。

 

絶対、あなたもこの本を読んだら、少しは楽になるよ、と。そう言い含めて、彼女は帰っていった。その本を置いて。

 

正直、本を読むやる気なんて起きなかった。かつては好きだった読書も、今では意欲がない。けれど、せっかく友人が気に掛けて置いていった本を、読まずに返すのも気が引けた。

 

結局、きつかったら途中でやめようと思いつつ、ページを開く。文章が、「女」としての私に寄り添ってくれているのを感じる。

 

思えば、立ち直れたのはあの本と、それを貸してくれた友人のおかげだったと、今では思う。彼女たちがいてくれたからこそ、私は今、女であることに誇りを持って生きることができているのだ。

 

 

女がうつになりやすい理由

 

「うつ」が急増している。おそらくあなたのまわりにも、何人かは「最近、うつみたいなの」とか「心療内科からうつの薬をもらっている」という人がいるだろう。

 

ひところで「うつ」とは言っても、その中には「うつ病」や、「双極性障害」、パニック障害やトラウマ後遺症などうつ病とは言えないものまで、いろいろな種類の問題が含まれている。

 

そして、女性の場合は、さらに月経や妊娠、出産に伴うホルモンの変動や、恋愛や結婚に関係した感情の動揺なども加わるので、その「うつ」のいちばんの原因を突き止めるのは、意外にむずかしい。

 

さらに、女性への社会からの要求のハードルは、高くなるばかりだ。女性たちは、子どもの頃から高齢者になるまで、さまざまな期待、助言、指示の声にこたえながら生き続けなければならない。

 

そこでストレスを感じない人は、まずいないだろう。つまり、現代社会を生きるあらゆる女性は、うつになってもおかしくない、ということだ。

 

現代女性の幸せは、どうやって「うつ」をコントロールするかにかかっている、と言っても決して大袈裟ではないと思う。

 

そのためには、まず「うつ」についてよく知ることが必要だ。「なんとなく、うつで」と言っているだけでは、何の解決にもならない。まず、自分のうつはどこからきているのか、きちんと知ることから始める必要がある。

 

心の問題は目に見えないからわかりにくくて、という声をよく聞く。しかし、きちんと知りたいという姿勢さえあれば、理解はそれほどむずかしくないはず。

 

あなたの幸せな人生の邪魔をする、心の大敵「うつ」。ではこれからいっしょに、新たな国民病とも言える「うつ」について知り、考え、そして付き合い方を学んでいきましょう。

 

 

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